巻頭 vol.6 2023年2月号

今月号の記事では、私が担当している「さくぶん教室」「小論文準備クラス」「小論文演習クラス」に半年間の授業テーマを紹介しました。 

これ以外にも担当しているクラスが二つあります。一つは、小論文演習クラスが終わってから各自の受験終了までの間、受験校の過去問題と志望理由書の作成、面接練習などをする個別直前講習会。もう一つはIB Japanese Self taught サポートクラスです。

私は、1999年より前身のACT教育研究所で、インターナショナルスクール・オブ・クアラルンプール(ISKL)の生徒を対象にIB Japaneseを教えていました。2008年からは希望者が大幅に増えたためISKLで直接教えるようになりました。その後、しばらくIBから離れていましたが2021年からハンガリーのインター校生にオンライン授業をしています。きっかけは、「さくぶん教室」に通っていた生徒が日本に帰って、しばらくしてハンガリーのインターに転校することになり、IBを始めるにあたって私のことを思い出してくれたからです。これを引き受けることができたのは、コロナ禍で仕方なくオンライン授業をすることになったおかげです。授業で使っているテキストを紹介します。

『こころ』夏目漱石、『沈黙』遠藤周作、『クララとお日さま』カズオ・イシグロ。「献灯使」多和田葉子、『ペスト』アルベール・カミュ、『羅生門/トロッコ/地獄変/桃太郎他』芥川龍之介、『宮沢賢治詩集』、『道徳経』老子、『万葉集』。読み応えのある優れた作品ばかりなので、ぜひ読んでみてください。

所長 大谷雅憲

新生ACT教育ラボとしての活動が始まって半年が過ぎました。手探りの中での船出でしたが、生徒・ご父母・卒業生の皆さんの温かいサポートで、ここまで無事に航行を続けられています。あらためてお礼を申し上げます。

さて、この六ヶ月間、日本のニュースでは物価上昇が繰り返し伝えられています。それでもマレーシアで日本製品を買うことを考えると、近所のスーパーでの買い物などはずいぶんお手頃な感じがしていたのですが、最近はそうでもなくなってきました。私の経済感覚が日本仕様になったのか、物価上昇率が激しいのか(おそらくその両方と思われますが)。先日は普段200円ぐらいで売っている卵1パック10個入りが300円超となっているのを見て驚愕しました。世界的な飼料の値上がりに加えて、鳥インフルエンザでニワトリが大量処分された影響とのことですが、なにせ「卵=物価の優等生(価格が常に安定している)」との刷り込みが定着している年代、手にした卵パックを二度見、三度見してしまいました。

とはいえ、日本では卵の値段が何十年も変わらなかったというのも考えてみれば不思議な話です。もちろん生産者の努力に負うところは大きいのでしょうが、これまでの価格は適正だったのだろうかとの疑問が沸きます。さらに個人的に昔から謎だと思っていたのは、ニワトリが機械のごとく毎日卵を産むということ。これは品種改良や飼育技術の向上による成果のようですが、突き詰めるとアニマルウェルフェア(Animal Welfare:快適性に配慮した家畜の飼養管理)というコンセプトに行き当たります。家畜の快適性って? 食品の安全はどうなる? 適正な価格とは?――卵とニワトリをめぐる問いから、これまで当たり前と思ってきた食の根本を見直すことになりそうです。

代表 佐々木真美