巻頭vol.4 2022年12月号

11月の作文教室は高校の帰国生入試小論文の問題に取り組みました。

「あなたが住んだことがある国の『宝』について書きなさい。それは、ものや習慣、考え方など、何でもかまいません。」(同志社国際高校)

 このテーマを考えるために、一歳のお子さんを持つ夫婦が作ったクアラルンプールプチ移住生活の動画を見ました。アメリカやオーストラリアなどでの移住経験がある彼らのKLでの生活は、「Kid’s friendly」なものでした。確かに、ショッピング・モールには子どもたちが遊べる空間がたくさんあるし、レストランの店員も子どもには優しい。平均年齢が28.5歳と若々しい国なので、「子ども中心」の社会は当然かもしれません(ちなみに日本は48.6歳。世界で2番目に高い)。

 後半にコロナ禍の厳しいロックダウンを経験したようですが、そこでも「繋がりを大切にする」「人の優しさ」を感じたそうです。僕もロックダウンが始まった時に、ローカルの友人がマスクや除菌スプレー、保存食、ミロなどを届けてくれたことを思い出しました。

  KLの住みやすさはデータでもわかります。日本人が移住したい国でマレーシアは14年連続1位、外国人が住みやすい都市でKLは1位(57都市中)、残念ながら東京は53位です。東京とクアラルンプールとの評価を分けたのは「外国人居住者を歓迎してくれる雰囲気」 「地元住民のフレンドリーさ」「言葉の壁」「生活コスト」などのようです。これらの項目はマレーシアの寛容性という「宝」につながっているようです。

所長 大谷雅憲

今年の年明け以降、円安が進み、10月にはUS1ドル150円を突破しました。11月末の現在はそれより少し落ち着いてはいますが、それでも昨年に比べれば、かなり低い水準を保っています。私は株や債権などの投資と縁がないため、これまで為替レートをさほど気にしたことはありませんでしたが、今回の円安は日々の生活費への影響のみならず、学生たちの動向にも影響を及ぼしはじめているのを感じます。

英語能力試験のページでも書きましたが、TOEFLの受験料は245米ドルに固定されているため、日本円で支払う受験生には負担が大幅に増えました。アメリカの大学で学ぶ日本人留学生にとっては、授業料が単純に為替レートだけで計算しても1.5倍近く膨らむことになります。また、欧米をはじめとする留学先の国ではインフレが亢進しているため生活費が大きくかさんでいます。日本では¥700程度のビッグマックセットがカナダで約¥1,000、アメリカでは¥1,200超などといった話も耳にするようになりました。コロナによる入国制限が緩和され、ようやく憧れの大学に通えるようになった留学生たちに想像以上の経済的負担がのしかかっているわけです。

こうした背景により、進路を海外の大学から日本国内へと変更する日本人インター校生は世界中に少なからずいるでしょう。それに伴い、英語の書類提出で出願が完了するグローバル入試の志願者は増えることが予想されます。帰国生の受験もまた世界経済と連動していることをあらためて実感します。

代表 佐々木真美