あじなんだよりAjinan Report vol.3

ACT教育ラボの所在地は広島県西部にある廿日市市阿品(「はつかいちし・あじな」と読みます)。「あじな」の住民になった自らを「あじなん」と名づけ、暮らしの中で気づいたことをご報告していきます。第三回は9月半ばに日本列島を吹き荒れていった台風14号に翻弄された一日の記録です。

九月半ばの週末、テレビをつけると気象予報士がそれは切迫した調子で、「過去に例がないほど危険な台風です! 数十年に一度しかないような大規模な災害が発生する恐れが高まっています!」。二十数年間マレーシアで台風の存在を忘れて暮らしてきた大型台風ビギナーに、これは怖すぎる…。

そのうち用意しようとぼんやり考えていたので、わが家には災害時の備蓄品もなければ、非常用持ち出し袋もなく、オール電化住宅のため、停電すると陸の孤島状態。車もないので避難所まで辿りつけそうもありません。

翌朝、雨が降り出す前に最寄りのスーパーマーケットへ開店と同時に走り込み、カセットコンロとLEDランタンを購入しました。レジに並んでいると、カセットコンロが飛ぶように売れていくのがわかります。あと三十分遅かったら品切れだったと思うと、パニック買いに走る心理が腑に落ちました。

家に戻って、次は暴風対策です。わが家には雨戸が何ヶ所かあるのですが、私自身これまでの人生で一度も使用したことがなく、こわごわ戸袋から引き出してセッティング。当たり前ですが、雨戸を使うと家の中は真っ暗で、なんだか眠くなってきた…。いや、ここで現実逃避してはいけない、雨戸のないガラス戸を隣人から教わった養生テープなるもので補強をせねば、と根性をふりしぼってテープを貼ったのがこの写真です。なにやら戦時下の庶民生活を描いた映画の一シーンみたいですね。

準備万端、あとは高潮が床下まで迫らず、暴風が近所の瓦や植木鉢を飛ばして家屋を破壊しませんようにと祈りつつ、テレビのスイッチをオン。この時、台風14号は広島からはまだ遠く、九州に向かって北上しているところでした。その九州南端の町で暴風雨吹きすさぶ現場から報告する女性記者の名前に目が止まります。…なんだか見覚えがあるような。現場の状況を伝える声も、どこかで聞いた感じがしなくもない。画面に映るマスクで半分隠れた顔をよーく見ると、おりょりょ、これは昔マレーシアのACTにいた生徒じゃありませんか。大学ではジャーナリズム専攻と聞いていたけど、初志貫徹で、こんなに立派になっちゃって、もう。そんな思わぬ再会(一方的ですが)もあった台風14号の顛末でした。

ということで、台風一過の秋空です。