あじなんだより vol.43
ACT教育ラボの所在地は広島県西部にある廿日市市阿品(「はつかいちし・あじな」と読みます)。「あじな」の住民になった自らを「あじなん」と名づけ、暮らしの中で気づいたこと・感じたことを報告していきます。今回は花にまつわるあれこれのつもりが、なぜかオランダに話が寄っています。阿品はといえば、少しずつ春めいてきました。

2月末、オランダ・アムステルダムに住む生徒が1週間の学校休み中だと教えてくれました。その名も「クロッカス・ブレイク」。クロッカスの花が咲く時期のお休みなので、そう呼ぶのだそうです。なかなか風流ですね。ちなみにこの生徒との授業は時差の関係で現地時間午前9時始まり(その曜日だけ登校時間が遅い:日本時間は午後4時)。テクノロジーが発達したおかげでオンラインでつながることはできるけど時差は詰められません。地球は今日も回ってる…。
そのオランダで1630年代に起こった投機バブル「チューリップ・マニア」の一件はご存知でしょうか。チューリップは中央アジア原産ですが、1593年にライデン大学の植物園で初栽培してから徐々にオランダ国内で人気となり、珍しい色や模様のチューリップの球根が高値で売り買いされはじめ、それがどんどんエスカレートして、ピーク時には球根1個がアムステルダム市内の家1軒以上の値段になりました。しかも現物の売り買いではなく、翌年にできる予定の球根を扱う、今で言う先物取引まで行われる狂乱ぶり。おぉ〜バブリィ!

しかし1637年、突如誰も球根を欲しがらなくなり、価格は大暴落してしまいます。近年の研究によると、この出来事はやや大げさに伝えられていて、実際には一国の経済を揺るがすほどの規模ではなかったとの説に落ち着きつつありますが、人間が欲にあおられて踊ってしまうさまは時代も場所も超えて不変、普遍ですね。とはいえ、その時に球根の品種改良や栽培・売買のネットワークが発達した結果、現在の“世界の花屋オランダ”(切り花の輸出額は世界No.1!)につながっているとも言われています。四百年前のバブルで破産した人には気の毒ですが、後世のオランダ経済の発展に貢献したと思えば、浮かばれるかもしれなくもない。

オランダではスーパーで食品を買うのと同じぐらいの感覚で花を買うそうだと、以前わが家にホームステイした高校生から教わったことがあります。彼は海外生ではなく、生まれも育ちも長野県の十七歳。夏休みの数日間クアラルンプールのわが家に滞在したのですが、その際に「将来どんなことをしたい?」と聞いてみたところ、「自分は男だけども花が好きで、オランダみたいに花を日常生活に取り入れる文化を日本に根付かせたい」と。
“花が好き”と聞いて、フラワーアーティストになりたいとか品種改良に取り組みたい程度のことしか想像できてなかったおばちゃん(私です)は、わが国に花の文化を作り出したいという野望に腰を抜かし、かつシビレました。かっこええ〜。しかし男の子だからといって「花が好き」と口にしづらいというのは、いまだジェンダーバイアスの呪いは根強いものがありますね。ともあれ、こんな壮大な夢を聞いてしまうと別の誰かに伝えたくなるもの。こうしてアイデアは広く遠く波及していき、いつか花のある暮らしが私たちの当たり前になる日が来るかも。
わが家の玄関前でも小さな花が咲きはじめました。「あれ、うちにもクロッカスが?」スマホのカメラを向けたところGoogle Chromeが「これはヒヤシンスです」と教えてくれました。クロッカスとヒヤシンス、「ス」しかかぶってない。Call me花オンチ。


