作文・小論文クラスの授業テーマ 2025年8月〜12月
大谷担当の「さくぶん教室」「小論文準備・演習クラス」の授業テーマを振り返ります
小論文準備クラス 対象:高校1〜2年生
2025年のこのクラスは、8月から始まる小論文演習クラスのための準備段階として4月にスタートしました。世界の基本構造の変動期に対応する知性とは何かを考えるために、生命科学・情報科学・政治経済の3つの柱と、その土台となる教育についてテーマを選びました。さらに、帰国生として必要な、異文化理解についても集中的に取り組みました。今年も統一したテーマは「パラダイム・シフト」になりそうです。
【一般的なテーマ】
「不老不死の薬」「動的平衡 福岡伸一」「コロナ後の『国家の自由と資本主義』の行く先」「超進化論〜植物編」「決定的瞬間〜写真を読む」「焼却炉:IB Paper1」
【入試問題】
「対話の教育 平田オリザ:横浜国立大学」「子どもの笑顔量:関西学院大学」
【マレーシアを知る】
「マレーシアを紹介する」「国際理解に必要なもの」「マハティール20世紀の証言」
小論文演習クラス 対象:高校2〜3年生
「帰国生入試では、『滞在国について知る』ことの比重が高い」と、口酸っぱく言っていますが、なかなか浸透しません。小論文だけでなく、面接、志望理由書などで、滞在国での経験(通っていたインター校の特徴を含む)が繰り返し問われます。受験前の付け焼き刃の知識ではどうにもならないので、日頃から言語化しておく必要があります。
【入試問題】
「感情移入と他者理解:早稲田大学2005」「専門主義と教養:早稲田大学2012」「社会力:早稲田大学2011」「統合を求めない多文化主義:早稲田大学2021」「生命倫理〜ADLとQOL:早稲田大学2005法」「子どもが忌避される時代:早稲田大学2017年」「クレショフ効果:ICU2013」「QWERT〜技術的合理性:一橋大学2012」 「自然と人間 養老猛司:早稲田大学2021」
受験該当学年対象のこのクラスは早稲田大学の問題からスタートします。理由は、課題文の文章量がA4で2ページと長すぎず、課題文の理解と生徒の海外体験を元にした表現力が求められるバランスのいい出題になっているからです。テーマも時代の動く方向を捉えた良問が揃っています。
【一般的なテーマ】
「『聴く』ことの力:鷲田清一」
「聴く」という行為は受け身な印象を持たれがち。でも、実は相手の存在を丸ごと受け止めることで、不安定な精神状態に陥った人を癒やす効果がある、という臨床哲学者のエッセイを読んで、「聴く力」について考えました。
まず最初に私自身が二十代のときに「聴く」ことの力を経験したエッセイを読み、それから課題文に取り組みました。課題文は1995年の阪神・淡路大震災のボランティアの体験談を元に書かれています。能登半島地震が起こり、阪神・淡路大震災から29年後の時期に授業をしましたので、自分自身が経験したこと(私はすでにマレーシアにいましたが、一人暮らしをしていた母が被災した時のこと、東京で教えていたときの生徒が学校を休んでボランティアに参加したことなど)を話しました。
さくぶん教室 対象:小学高学年〜中学生
「決定的瞬間〜写真を読む」「写真について〜土門拳と荒木経惟:IB Paper1」
「速く正確に正解にたどりつく力」から「『正解のない問い』に挑む力」へ。求められる「学力」はシフトしています。そこで注目されているのが絵画や写真などの視覚情報を「読む」力です。でも、どうやって絵や写真を「読む」ことができるのでしょうか。


授業では、黄金分割・黄金螺旋・9分割法・動線など、構図を理解するための基本知識や、何が写っていて何を切り取っているのか、画面の外には何があるのか、どこにピントが合っていてボケやブレのある部分はないか、グラデーションやコントラストはどうなっているのかなどを、5つの写真をもとに具体的に話し合いました。そして、それをもとに「考え」を深めていきます。
考えるポイントは次の3つ。
- どこからそう思ったのか?
- そこからどう思ったのか?
- 他に見つけたこと、考えたことはないか?
この3つのシンプルな「考え方」は、小論文演習やIBの作品分析をする場合でも極めて効果的であることに気づきました。「たんなる感想」ではなく「根拠のある意見」を作るためのトレーニングになるのです。
「日本人はどこから来たのか」
「推理と推論」
「作品鑑賞:『なめとこ山の熊』(宮沢賢治)」
『なめとこ山の熊』(宮沢賢治)の作品鑑賞は、「『正解のない問い』に挑む力」の応用編です。3つの「考えるポイント」を使って作品を読み込んでいきました。


青字部分は作品読解の手がかりになる問です。5回の授業をかけてこの作品を読みました。宮沢賢治や芥川龍之介の短編は、文章量・テーマ・表現技法などを考えると、文学作品に取り組むスタートとして格好の作品だと思います。中学・高校生レベルの国語力を維持するという目的、さらには、IB日本語の準備にもなります。実際、IBの文献リストに載っている作品を使い、そのレベルを意識した授業をしています。

