巻頭vol.29 2025年新年号
今年は巳(ヘビ)年なので、蛇にまつわる話を少々。
世界の宗教を掘っていくとあちこちで蛇が登場します。エデンの園でイブを惑わせた蛇は有名ですが、日本でも八岐大蛇がいます。中国の洪水神である禹、共工、女媧なども皆、蛇です。仏教も原始仏典の一つ『スッタニパータ』の最初の章は「蛇の章」。蛇の章は17の教えに分けられていて、文末のすべてに「蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなものである。」という比喩で締められています。
なぜ、古代人にとって蛇が神性と繋がったのか。それは、スッタニパータの例でもわかるように、蛇が脱皮という行為を通して、死と再生の象徴するものだから。その他にも神格化された理由として、足を持たないという異形、毒を持って人を瞬時に殺せる力、瞬きをしない目、トグロを巻く形態、男性性器との形態的類似などが挙げられます。
蛇の形態的特徴が、自然現象と結びつくとどうなるでしょうか。蛇は神格化されて神獣としての龍(竜)になる。このあたりは、象形文字としての漢字を見ると面白い。
まず「神」という字。これは、元々は「申」という形で「雷」を意味しました。「雷」は「神鳴り」。その形は天を引き裂くように光が走る。まるで蛇の蛇行のように。壮大な音と電光、そして破壊する力。これが火龍です。火山が爆発した溶岩の流れ、地震によってできた大地の亀裂、これも火龍。竜の上の「立」という字は、冠を被っている姿。神獣たるゆえんです。「雲」は雨の下に「云」、つまり、とぐろを巻いた形の竜。さて、雨が上がると、虹になります。「工」は「緩やかに反りのある半円形」という意味を持っています。そういう形をしている虫、つまり竜。それが川に落ちていく。「江」だ。川は「蛇行」している。川の近くで古代文明は生まれました。洪水は古代人に恵みを与えると同時に死をもたらす災いでもある。こちらは、水竜。中国の古代神が竜形をしていたのはそのためでしょう。
蛇の話と竜の話が混線してしまいました。こういうのを「竜頭蛇尾」と申します。お後がよろしいようで。
所長 大谷雅憲
2025年、あけましておめでとうございます。「ミレニアム〜!」と騒がれた世紀の変わりめを過ぎて四半世紀が経つのかと思うと、ちょっとびっくりしてしまいます。と言っても十代のみなさんにとっては、西暦2000年も紀元前も明治維新も第二次世界大戦も同じ程度に遠く感じられることでしょう。以前、中学生に日露戦争の話をしていた際、「そのとき、先生はどうしていたんですか」と真顔でたずねられて絶句したことがあります。後から「そんなものかもな」と納得しましたが(念のために言っておくと、日露戦争は1904-1905年で、私の祖父母世代が生まれたぐらいの時代です!)。
25年前の2000年、Yahoo!Japanはすでにあり、アマゾンジャパンが同年11月に開業となるものの、YouTubeは2005年開始、iPhoneの初代が2007年発売なので、世界にはスマホもユーチューバーも存在しませんでした。それでもそれなりに日々楽しく暮らしていたのですね(どうやってかはあんまり覚えていませんが)。25年後の2050年に今年を振り返ったとき、「当時の人たちはよくがまんしてたなあ」と呆れられるぐらいに世界が住みやすい場所になっていることを願いつつ、目の前の一年を充実させたいと思います。
ACT教育ラボを今年もよろしくお願いします。
代表 佐々木真美