KLクナンガン 母のぼやき 第3回 by KAYAの母
地球の暮らし方B面「私のママック物語」
ママックとはインド系ムスリムの経営する食堂で、24時間営業の安くて美味しい庶民の味方。ムスリムだからアルコールと豚肉料理はありませんが、ほとんど全ての料理と飲み物は、スターバックスよりもカスタマイズ注文することができます。
ある時、家の近所のママックでの会話です。
「お客さん日曜の朝によく来るね」
「そうよ、もう私たち(娘と私)常連よね?」
以後、店長らしき彼は我々を見ると「久しぶりー」「今日は娘さんは学校行ってるの?」などと声をかけてくれるようになりました。店員さんはみんなテキトーで親切、飲み物のカスタマイズの間違いを矯正してくれた私の推しの店員さんは、よくよく見てるとポーカーフェイスだけどオールラウンドプレイヤーで、ある時はロティ(インド風薄焼きパン)職人、ある時はドリンク職人、ある時はホールスタッフという万能ぶり!
しかし、そんな私たちのHappy Mamak Lifeに突然の終わりが! ほんの少しの間、他の店に通っている間に、なんと店が解体され始めていたのです(建物といってもほぼ屋根だけだけど)。店長が解体現場で何か指図をしているのを見た時には、ああパンデミックの影響で経営が傾いてしまったのだろうと悲しくなりました。私にとって慣れない土地でのロックダウン生活の中ではママックの料理を持ち帰るのが楽しみだったし、店内飲食可能になってからも、SOP(Standard Operation Procedures:コロナ時の政府による規制)完全無視でわざわざマスクを引き下げ口元を見せて喋る店長の言葉は聞き取りやすかった。。。
だがしかし、見つけたのです! 電灯に無断で縛り付けてあるこの巨大告知を!
それから半年後、我らの新生DEEN(ママックの店名)がオープン。新生DEENは美しく生まれ変わり、屋根だけでなく外との仕切りもあり、店の中は白色で統一され、店員さんは揃いの制服まで着ていました。こんなに喜ばしいことはないはずなのに、娘と私の心は複雑でした。だって、あの土間みたいな床、店のぐるり全てが出入り口、断熱材むき出しの屋根、そこからぶら下がってる蛍光灯と天井ファン、木陰の席はデリバリーのお兄さんたちの指定席、テーブルから丸見えのロティ職人の仕事ぶり。。。ああ、以前のボロいDEENがなつかしい。
だけどコレって傲慢な想いですよね。新生DEENはキレイになってもっと繁盛しているのですから! 以前とは違う客層も取り込んで賑わっていることは私の目にも明らかでした。変わってほしくないけど、その前進を応援しなければ単なる無責任な通りすがりの人になってしまう。。。
新生DEENにもティッシュやお菓子売りの人が、以前と変わらず来ていました。ある時、子どものお菓子売りがいたのですが、その子は大きなお菓子のトレーを抱えたまま隣のテーブルでずっと立ち止まっていました。彼らは押し売りなんてしないのでどうしたのかと思っていたら、店員さんのひとりがお札を何枚か持って子供のところに戻ってきました。どうやら店員さんはお釣り用の小額紙幣を持っていないその子のために店で両替をして戻ってきたのでした。
DEENは変わっていなかった!
マレーシア文化に興味を持ったのも、マレー語で注文したいと思ったのも、DEENがそこにあったから!
新生DEENに、私の推しの店員さんはもういなかったけど、店長はいつにも増してニヤつきながら「Long time no see! また朝に来なよ!」と言ってくれました。ありがとうDEEN。