KLクナンガン* by KAYA 第3回

*KL memories(KL追想)の意

地球の暮らし方A面「mamakと私」

日本に帰ってきてから無性にマレーシアが恋しく感じます。特にママック(mamak)に行きたくてしょうがない。ママックとはインド系ムスリムを意味するワードで、マレーシアではその人たちが経営する食堂のことをそう呼びます。マレー系、中華系、インド系、民族関係なくどこの地域にでも存在し、異常なまでに街に馴染んでいる。そして安価なのに美味しい食事、メモを取らずに大量の注文を裁く店員(オリンピック級の記憶力)、24時間営業、たまに間違えるオーダー、(汚いとは言わずに)年季の入った建物と机。これがママック5大要素です。一つでも欠けてたらママックとは言えません。(←写真は「カレーに刺さるグリーンチリ」)

 つまりママックとはマレーシアを代表する国民的食堂、もはやないと生活や社会が成り立たない日本人で言うコンビニ的な存在、この二つを同時に請け負っているめちゃくちゃ重要な文化なのです。

 そしてママックは我々ぱぶりっくトランスポーテーション部(部員はKAYAとその母)にとっても重要な存在です。渡馬後、一時的にロックダウンが解除されて間もない頃、家の近くにあったママックに行きました。全ての始まりはここからでした。ロックダウンでなかなか外に出れなかった反動もあり、我々は足繁くこのママックに通い詰め、様々な知識を得ました。マレー語、料理の種類、複雑なオーダーの仕方、マレーシア人の性質と文化、社会問題(例:第7回KLスカランをご参照ください)、処世術、などなど。ここで得られたスキルとノウハウのおかげで他のママックやレストランを探検、学校生活や勉強に活かすことができました。もうBos, teh c ice kosong satu, makan sini nasi putih satu curry champur(砂糖なしミルクティー1つ、店内飲食でカレー1皿)は手慣れたものです。

 私のマレーシア生活の思い出にはどんな出来事であってもいつもママックが登場します。学校帰り、テストの点数が良くて嬉しかった時、親と喧嘩した時、楽しい時も辛い時もいつもママックで何かを飲んで食べていました。特に親と喧嘩した時はママックの店員さんが話しかけてきて(内容は別に私を励まそうとするものではない)、もちろんマレー語なので20%くらいしか分からなかったですが、怒り悲しみが吹き飛んだと同時に処世術を学びました。マレーシアにいた時は日常すぎてママックがこんなに自分を作ってくれた場所だとは気付きませんでした。灯台下暗しですね。私のマレーシア生活を支えてくれたママックには大感謝です。ありがとう、Terima Kasih。これからは何気にお世話になっている日常の何かに気付く努力をしてもっと感謝したいですね。

 これからの人生のため、またマレーシアに行く時用に、ここにママック・マイルストーンを残しておこうと思います。

●DEEN 全ての始まり。全てを教えてくれてありがとう。暗い夜の中ポツンと明るい建物があり、お客さんで賑わっているのを見ると家に帰る時よりも心が温まります。No Deen No life。

●Pelita 一番最初に行ったママック。チェーン店で都心に大きく構えている店もあるので是非試してみて下さい。私は食べたことないですが揚げアイスという謎メニューがあります。

 

●Ali Food Corner ここもチェーン店ですが私の近所の店は中学生の次期店長(店長の息子)が仕切っていました。盛り付け時にカレーを高くあげる謎パフォーマンスがたまにバズっています。Pelitaと同じく都心にもあるので是非挑戦を。

●Sadam 常に混んでいるので並びますが、味は感動ものです。店名は湾岸戦争時のイラク大統領サダム・フセインを支持したいという店長の思いから来ているそうです。

●Batu Tiga Mamak 屋根代わりのパラソルとテーブルが並んでるだけの開放的すぎるママック。大通りに面しており、いつ車に突っ込まれてもいいような位置にあります。車がママックに突っ込む事故が多発しているマレーシアではリスキーですが味が美味しいので全て良し。店員が気まぐれなので難易度高めかもしれません。最近は隣の銀行の敷地にもテーブル置き(おそらく無許可)、じわじわと勢力拡大中。

●Pork Nasi Kandar Mamak オーナーはムスリムではなく中華系のおじさん。ポーク…ママックの意味とは。ここは行ったことないので次回マレーシアを訪れる時に試してみたいですね。

●Big Tree Mamak 客全員中華系。Google Mapのレビューによるともはやママックではないらしい。

最後に、Queenのボーカル、フレディ・マーキュリー(Mercury)ならぬママックの一店員、フレディ・マーカリー(Mercurry)を添えて。

Mamak Rhapsody https://youtu.be/Fhn6J-6Z5kI?si=Tuv6C-iD1QI9TLc2

ライター:KAYA(マレーシア名物ココナツミルクのジャムと同じ名前です):2005年12月生まれ。クアラルンプール(KL)のインターナショナルスクールを今年卒業し、秋から日本での大学生活がスタート。マレーシア滞在中は『KLスカラン(KL Now)』のタイトルで全13回のコラムを連載。新タイトルになった今後はKL・東京はもとより、世界中のいろんな街をぶらついては立ち止まり、あれこれ呟いていく予定です。