あじなんだより Ajinan Report vol.25

ACT教育ラボの所在地は広島県西部にある廿日市市阿品(「はつかいちし・あじな」と読みます)。「あじな」の住民になった自らを「あじなん」と名づけ、暮らしの中で気づいたこと・感じたことを報告していきます。8月初めの3日間、平和記念式典に合わせてやってきたカザフスタン出身の留学生のホストファミリーになりました。

例年8月6日、第二次世界大戦時の原爆投下を振り返り、恒久平和を願う式典が広島市の平和公園で行われてきました。この日に合わせて、隣接するわが廿日市市の国際交流協会では全国から十数人の外国人留学生を募り、市内で数日間のホームステイをしてもらいながら、被爆者の話を聞いたり地元の学生と平和について討論したり、といったイベントをほぼ毎年開催しています。同協会で日本語ボランティアを半年前に始めたことからこの企画を知り、今年初めてホストファミリーに手を挙げてみました。

今回わが家にやってきたのはカザフスタン出身のナジグルさん。長崎大学で放射線の影響による消化器疾患を研究している24歳の大学院生です。なぜその専攻を?と尋ねたところ、彼女の故郷セメイから約150キロの場所に旧ソ連(ロシア、ウクライナ、カザフスタンなど現在の約15カ国で構成されていた)の核実験場があり、1949年から四十年余りにわたって核実験が繰り返された結果、いまだに多くの放射線被害があることを教えてくれました。

そういえば、セメイの旧名セミパラチンスクという地名、核実験との関連で耳にした覚えはあります。でも、それがカザフスタンだとは思いもしなかった。カザフと聞いて私が思い浮かべられるのは、十年前のソチオリンピックで銅メダルを獲得したフィギュアスケーター、デニス・テン(2018年に強盗殺人事件の犠牲となって25歳で死去)と旧首都アルマトゥに世界最大級のスピードスケートリンクがあること、りんごの原産地だということぐらい。ちなみに後ろの2つは、塾で使用している英語の教科書ロングマン・アカデミックライティングシリーズ入門編の例文から得た豆知識です(ナジグルさんに確認したところ、間違いではないらしい)。

反対に、彼女が日本に来る前から知っていたものはと言えば、「キメツ」「ジブリ」「シンゲキノ〜」etc.…アニメ強し。日本のアニメはカザフスタンでも人気なんだそうです。彼女自身、長崎に来て名物カステラを目にしたとき、「これが“鬼滅の刃”で弱っている主人公・炭治郎がもらった、あのカステラか!」と感動したというから(書いている本人、全然脈絡がわかっていません)、大層なアニメファンのようです。そういえば宮島のお土産物屋で一番時間を費やしたのはジブリグッズの店だったかも。

彼女はイスラム教徒なので、食べ物はどの程度ルールが厳しいのか初めは気になりましたが、本人に確認すると、「豚肉とお酒以外はだいたいOK」みたいなスタンスで、スーパーで買ったお寿司もうちで調理した焼肉もそれなりに楽しんでくれたと思います。また、我が家で育てた枝豆がちょうど食べ頃だったので、一緒に収穫して塩茹でを食卓にのせました(写真:枝豆の茎からサヤを取る作業をさせられている任せられたナジグルさん)。

そういえば、厳島神社は厳密に言えば宗教施設ではあるけども、そこらへんも気にせず、鳥居の前でにっこり記念撮影。観光をエンジョイすることが他文化をリスペクトすることにつながるなら、それも世界平和への一歩だよね。