KLスカラン 母のぼやき 第14回

複眼で見るマレーシアB面「KLバス事情」

KL市内を走る路線バスでは想定外の出来事に遭遇します。走行中に、なんだか軽めの衝撃音がしたぞと思ったら案の定、運転手さんが「パンクしたからみんな降りてー」、次のバス停で乗客全員が降ろされました。みんな慣れたもので、料金はタダになり、誰も文句なんて言いません。この時私たちにとってラッキーだったのは運転手さんが英語でパンクを知らせてくれたことでした。運転手さんは(絶対に全員英語を喋れるけど)基本的にはすべてマレー語で話します。(写真はそのパンク車)

ある日のバスは割と混んでいて座席はほぼ満席でした。一人のおじさんが私の隣に座り、買ったばかりの新品の大きな鍋を抱えていました。次のバス停で私たちの前の席が空くと、そのおじさんがバス前方で立っている若い男性を手招きして座らせました。その青年はガスコンロの大きな箱を抱えていました。着席した彼はコンロの大きな箱を通路側に置いたのですが、おじさんは邪魔にならないように縦長にして膝の前に置いた方がいいと指導したのです。この状況で、この二人は仲間なんだなって思いますよね? ところが、おじさんは途中の停留所で鍋を青年に渡して、前方に立っていた奥様らしき女性と降りたんですよ。しばらくして青年はガスコンロの箱と大きな鍋の二つを持って一人で降りて行きました。――。あー、二人は面識なかったんだ。おじさんは青年の荷物が多かったから持ってあげて、まずは自分が席に座って、次に彼が座れるように手招きしてくれたんだ。ほとんどの場合、このバス路線で奥さんを立たせて自分が座る旦那さんはいない、見たことがない。荷物があるとはいえ旦那さんと見ず知らずの青年に席を譲るなんて奥さんも優しい人だな。なんて妄想が過ぎますかね。。。

箱に入ってない剥き出しの扇風機、派手な色の新品の毛布や枕のお買い物帰りの人が多いです。これは路線によるのでしょう、KLのダッカと呼ばれる地区のバス停留所から乗る場合よく見かけます。

地元の小学生の下校時間に遭遇してしまうと、うるさいうるさい、特に男子チーム。でも高学年のお兄さんはちょっと大人で睨みを利かしている気がする。高学年も低学年も一緒の時間にバスに乗っています。

 

運転手さんによって走行状況がかなり違います。猛スピードだったりゆっくり慎重派だったり。バス停で待っているのが若い男性の場合謎の通り過ぎがよくあるし、若い男性の降車の時もしっかり停車せず走りながら降りる感じです。女性(おばさん含む)には優しい気がします。

謎の連帯感。多くのバスは、乗車時に一律最大料金3リンギットがプリペイドカードから差し引かれ降車時に清算するシステムです。降車時の返金読み取り機が壊れた時の乗客の一体感は清々しかった。乗客二十人ほどがガヤガヤ一致団結して運転手さんに交渉、私以外の全員が知り合いなのだと思っていたら、精算後全乗客は何事もなかったかのようにそれぞれの方向に散っていきました。共通の目的が言語の壁をも超えていた!

まるで楽しいことばかりの路線バスのように書きましたが、時刻表はあってないようなもの、看板のない停留所も多い、車内備品はよく壊れている、となかなか手強い路線バス。でも、そこにはFeelが満載だよ。

ライター:KAYAの母 2020年より夫娘とともにマレーシア生活をスタート。ときに鋭く、ときにゆる〜く、話題に切り込みつつ、ぼやいていきます。