巻頭vol.22 2024年6月号

先月に続いて、コンデジを持って散歩をしていると、ものの「形」そのものに目が向くようになりました。ある日、たんぽぽの綿毛に近づいてシャッターを押すと、種と綿毛のネットワークがきれいで、どこかで見たことがある形だなと思っていたら、「インドラの網」に似ていることに気づきました。「インドラの網」は、インドラ神(帝釈天)の宮殿にある網で、「その無数の結び目の一つ一つに宝珠があり、それらは互いに映じ合って、映じた宝珠が更にまた互いに映じ合うとされるところから、世間の全存在は各々関係しながら、しかも互いに障害となることなく存在していることにたとえる」(日本国語大辞典)ものとして出てきます。

宮沢賢治にはそのままのタイトルの作品があり、また、『春と修羅』の序で「すべてわたくしと明滅し/みんなが同時に感ずるもの」という表現は「インドラの網」からイメージされたものなので、IB日本語の授業で取り扱ったことがありました。

連想は、たんぽぽの綿毛→インドラの網→南方マンダラと続きます。やっぱり世界は無限に繋がっているんだな。

所長 大谷雅憲

                  

昨日、地元の廿日市(はつかいち)高校の敷地に熊が出没し、臨時休校になったというニュースがありました。どんだけいなかだと思われるかもしれませんが、わが廿日市は人口11万人(あまり多くはないですね。静岡県掛川市や山口県防府市と同じぐらい)の、瀬戸内海に面した地方都市。新幹線は、止まりませんが走ってます。最近、全国的な熊の出没情報をテレビでよく目にするようになったと思ったら、こんなに身近なところでも!と周囲はその話題でもちきりです。

以前、「あじなんリポート」でも触れましたが、広島・山口・島根にまたがる地域に生息するツキノワグマは国によって狩猟が禁止されています。その一方で、人身事故を回避し、農作物被害が広がらないよう、奥山に定着させる試みが行われています。そんな努力と相反するように、廿日市市は山を切り崩し、大々的に「観光✖️産業の新拠点」を作ろうとしているのですから、人間のやることはあまりにチグハグです。熊もおちおち奥山に落ち着いていられませんよね。

代表 佐々木真美