あじなんだより Ajinan Report vol.22
ACT教育ラボの所在地は広島県西部にある廿日市市阿品(「はつかいちし・あじな」と読みます)。「あじな」の住民になった自らを「あじなん」と名づけ、暮らしの中で気づいたこと・感じたことを報告していきます。今回はハワイ島と廿日市市の姉妹都市提携の記念パーティのお話と移民、それぞれの神様についてなど。
先月、アメリカ合衆国ハワイ州ハワイ郡と廿日市市が姉妹都市提携を締結しました。その調印式後のレセプションパーティに英語のボランティア通訳として紛れ込んで(?)きました。通訳といっても、ゲストを各テーブルに案内するとか、ディナー中のおしゃべりをサポートするとかの、いてもいなくても大差ない程度のお手伝いでしたが、市長・郡長や各自治体の議員、企業の役員など、普段接する機会のない方々を間近かに見ることができて、興味深かったです。
中でも、パーティ終了間際にある議員さんが、「元気でね、って何て言うの?」と尋ねてこられたのが印象に残りました。「テイクケアで通じますよ」と答えはしたものの、なんだかそっけないなあと気になりはじめ…。take careには「自分で自分をちゃんと世話してくださいよ」的な、ちょっとした厳しさが感じられる(気のせい?)一方で、「元気でね」には相手の健康に対する願い、もしくは祈りのような甘やかなニュアンスがある。とはいえ、May you be healthyだと、なんの呪文だって感じもするし。通訳って難しい。だからってそのストレスで人様のお金を何千万円もギャンブルに注ぎ込むことはないと思いますがね@MLB。
話戻って。このハワイ郡というのは、ハワイ諸島最南端に位置するハワイ島にぴったり重なる行政区域で、ハワイ州全体と同様に日系人が多く、パーティのハワイ側参加者の半数以上はファミリーネームがヤマナカさんとかタニグチさんとかの日本名でした。じつは私のいとこにもホノルル在住の日系3世がおりまして、ちょうどパーティの一週間前に広島を訪れ、お好み焼きとアナゴめしを堪能して帰りました。
私たちの先祖がかつて広島からハワイに渡り、サトウキビ畑で働いて、いろいろあって(中略)、現在に至るわけですが、いま私が住む阿品の隣、地御前(じごぜん)という場所も明治時代以降ハワイ移民を輩出した土地です。地御前という濁音だらけの地名は、海にある厳島神社に対して、本土側=「地」にある御前(神様の居所)の意で、厳島神社の外宮である地御前神社から来ています。
背後に山が、眼前に海が迫り、耕作できる土地が少なかっため、農家の次男以下が移民として海外に出ていったと言われるほど人があふれていた土地に、いまや牡蠣養殖の労働力を補うため、ベトナムやフィリピンから働き手に来てもらっている。日本の人口減少を象徴するような話ではあるものの、海を越えて人が出入りするこの土地には独特な風通しの良さがあるような気がします。
ちなみに厳島神社の御祭神は、宗像(むなかた)三女神といわれる市杵島姫命(イチキシマヒメノミコト)、田心姫命(タゴリヒメノミコト)、湍津姫命命(タギツヒメノミコト)の三柱で、海運や芸能、豊穣などを司り、ハワイ島ではキラウェア火山に住む女神ペレが炎や稲妻、ダンスなどを司ると言われています。ハワイ州では2045年までに再生可能エネルギー率を100%にする法律が出来て、太陽光・風力・バイオ燃料などの導入が進んでいますが、火山島であるにも関わらず地熱発電開発はあまり進んでいません。というのも、地面を掘削する行為は女神ペレに対する冒涜にあたると(いう名目で)反対運動が根強いのだそう。かたや廿日市市は厳島神社の元・神領の丘を切り崩して大規模施設を造成中。結局、厳島神社は観光資源であって、信仰の対象ではないのだな。日ごとにハゲていく森を見ると胸が痛みます。