KLスカラン 母のぼやき 第13回
複眼で見るマレーシアB面「マレーシアCM考察・ハリラヤスペシャル」
マレーシアでは4月半ばにラマダンが終わり、ハリラヤという断食明けのお祭りがありました。マレー系マレーシア人の英会話の先生が教えてくれたのですが、まずお祭りの最初にやることは「謝罪」なのだそうです。おめでとう!を言う前にごめんなさいって言う、ご馳走とプレゼントに浮かれる前に反省する宗教なんですね。私はそのことを全く知らなかったのでとても驚きました。前年の行いを戒め懺悔しなければお年玉がもらえない!そんなイメージかなぁ。
ハリラヤ用お年玉袋→
さて、今年もラマダン・ハリラヤの季節には、Balik Kampong(帰省)やハリラヤの謝罪をテーマにしたネット広告がたくさん流れていました。マレーシアのネット広告ですが、ドラマ仕立て5分越えの長いものが少なくない。もはやコマーシャルの域を逸脱した涙なくしては語れない感動ストーリーであり、どんな企業のどんな物の宣伝なのか分からなくなっている。
けれど、ついつい見てしまうのです。今年も、そのドラマ仕立てのコマーシャルの中で多くの登場人物が謝っていました。小さな子供も、ティーンエイジャーも、大人も、家族に向かってそれぞれの懺悔をしていました。そして今年のコマーシャルで初めて強く感じたことが一つあります。それは懺悔を告白された側は許さなきゃいけないんだなー、懺悔を受け入れるって難しそうだなー、ということです。大切なものを壊されてしまった父親が、うーんという表情を一瞬するんだけれども懺悔してきた高校生くらいの子どもを許す数秒のシーンが私には印象的でした。批判の対象を自分で自分に向けるって、とっても難しいことだと思います。
ただ、そのような話が感動ドラマとして作られるのは、やはり理想と現実のギャップがあるからなのかもしれません。以前、韓国人女性に「韓国ドラマではおばあちゃんが孫息子に恋愛指南したり、家族の結びつきが強く良い文化だね」と言ったら、「は?あれはドラマの世界。現実じゃないわ。韓国でも核家族が問題になってるから、理想的な家族像を描くドラマがウケるわけよ」とのこと。また、ふとしたきっかけで昔のアメリカドラマ「大草原の小さな家」の話になった時、熱心なプロテスタントだった彼女は「あれはプロテスタントの理想の家族像を描いたドラマなのよ」と。確かに、我々はみんな理想と現実のギャップの中で生きているんだ。
そうそう、ハリラヤと旧正月の時期が重なってしまう年「Gong Xi Raya(ゴンシーラヤ)」(中華系の旧正月 恭喜发财Gong Xi Fa Caiとイスラム教のラマダン明けのお祝いHari Rayaが合体) があるそうです。さぞかしめでたいのかと思いきやここにも理想と現実があるようです。マレー系先生がおっしゃるには「Gong Xi Rayaは最悪よ。どの店も閉まっていて外食もできないし、ただでさえひどい帰省渋滞も2倍よ!」とのこと。
マレーの伝統的田舎家を模したディスプレイ→
ライター:KAYAの母 2020年より夫娘とともにマレーシア生活をスタート。ときに鋭く、ときにゆる〜く、話題に切り込みつつ、ぼやいていきます。