あじなんだより Ajinan Report vol.21
ACT教育ラボの所在地は広島県西部にある廿日市市阿品(「はつかいちし・あじな」と読みます)。「あじな」の住民になった自らを「あじなん」と名づけ、暮らしの中で気づいたこと・感じたことを報告していきます。今回は春の陽気に誘われて阿品近辺を散歩したときのつれづれを。三寒四温の時期は過ぎて、いま二寒五温ぐらいです。
私の住む阿品三丁目は広島市のベッドタウンとして約半世紀前に造成された埋立地で、築五十年の家が立ち並ぶ昭和の気配が色濃く残る団地ですが、そこから海に背を国道2号線・通称「宮島街道」を越えていくと、谷あいにのどかな農村風景が広がっています。この奥まったところにある「あじな桜」(何のヒネりもない名前ですな)がそろそろ見頃とのことで、散歩がてら出かけました。
まず宮島街道を横切ったところで出会ったのが、この「おしえ地蔵さん」。同業か?と気になったので、足を止めて由来を読んだところ、このお地蔵さんが教えるのは西国街道への行き方、つまりは旅人に道案内をしてくれたそう。「昭和54年に宅地造成のため現在地に移設」とあり、旅の安全を見守ってくれたお地蔵さんは、いまは付近住民の往来をながめるのみ。なんだかすまんね、お地蔵さん。
地蔵堂を後にして、昔は庄屋さんのお屋敷だったんだろうなという感じの大きな家に圧倒されながら歩いていくうち、道は次第に狭まっていき、「これは私道では?」と思うような、車一台がようやく通るほどの路地へと導かれていきます。果たして無事に目的地にたどり着くのかと一抹の不安を抱きつつとぼとぼ歩いていると、道端につくしが芽吹いていました。
春の風情ですね。つくしは炒めて卵とじにすると美味しいと聞いたことがありますが、じつは食べたことがありません。ワラビやゼンマイなどの山菜と違って、里の道っぱたに生えているので、ワンちゃんたちのおトイレスポットとオーバーラップしている疑いがどうにも拭えず。近所にはヨモギもたくさん生えているのですが、草団子を作ろうと言う気にならないのは同様の理由です。
それはさておき。この細い道をたどっていくと、突然視界が開け、眼前にそびえ立つのは貯水池のコンクリート壁。その右手で爛漫と咲き誇るのが「あじな桜」、枝垂れ桜(しだれザクラ)です。澄みわたる青空に薄いピンクがよく映えて、トンビもピーヒョロヒョロと鳴きながら飛んでいく、春を満喫した三月終わりの朝でした。