KLスカラン 母のぼやき 第12回

複眼で見るマレーシアB面「ラマダン考察」
1つのトピックに母娘それぞれの感性で迫るコラボレーションコラム

マレーシアでは2024年3月11日からラマダンが始まり、ムスリムたちは約一ヶ月断食をします。ラマダン中に飲食できるのは陽が沈む時間から日の出前まで。日の出前にお祈りと朝食を済ませるということで、家の近所のマレー系のお客さんが多いママック(インド系ムスリム食堂)には、こんなお得なセットが売り出されていました。なんと、ご飯とカレーと鶏の唐揚げと野菜と飲み物がついてたったの9リンギット(=約300円)! ハッシュタグは#Kena sekali pasti surr(ガチで美味いぜ!)。だがしかし、午前2時半から午前6時までにお店に行かないと食べられない。

ラマダン期間中の日の入り直前の時間にマレーシアで有名なチェーン店Chicken Rice Shopにいたときには、ムスリムたちは目の前に並べられているチキンライスに手をつけず、7時15分ごろの日の入り時刻になったらみんな一斉に食べ始めました。驚きました、小学校の給食以来の光景です。店員さんと猫型ロボットは日の入りまでに全ての注文を配り終えるためにとても忙しそうでした。

ラマダン中の日の入り時刻直前の車の運転は注意が必要です。昨年、たまたま主人の運転する車で帰宅する途中、毎日恒例の渋滞にハマったのですが、なんだか多くの車がいつもよりギリギリまで車間距離を詰めているし、バイクは真剣な顔でガンガンにすっ飛ばして車の間をすり抜けていくし、喉が渇いて腹が減っているピリピリした雰囲気が伝わってきました。

9時から5時まで飲まず食わず(たぶんそれに近い状態で)で働いて深夜から夜明け前に油っこいご馳走をワイワイ言いながら食べる、それはそれでドーパミンなども出たりして〆のラーメン的な背徳感のある幸せも味わっちゃたりできるのだろうが、なんていうか、現代の生活スタイルとラマダンの生活リズムがかけ離れちゃっているような気がしないでもないような。しかしそのように考えること自体不謹慎なのかもしれません。仕事の効率が上がるとか、生産性が上がるとか、そんな社会の歯車的な考えだけで生きてない訳だし。。。

そういえば昨年、どんな時も3食きっちりと食べないと気が済まない私の主人が、ムスリムでもないのに一人断食を決行しました。家族中の一人が極端な別行動をすることは、はっきり言って迷惑以外の何物でもありませんでしたが、ひとり断食を続ける主人をよそにランチや軽食を食べまくり、我が道を行きました。腹には色々抱えながらも諦めと割り切りをポシティブに活用、主人の断食の自由も尊重し、娘と私の通常生活スタイルも確固たる信念を持って貫き、多様性を認め多文化共生我が家を経験いたしました。そしてぼんやり思ったのですが、他文化との境界線が曖昧だと寛容になれないのかも、これだけは譲れないというものを持っているほうが他者に寛容になれるのじゃないかな。マレーシアはその辺のケジメの付け方が令和の日本より上手なのかもしれません。

ライター:KAYAの母 2020年より夫娘とともにマレーシア生活をスタート。ときに鋭く、ときにゆる〜く、話題に切り込みつつ、ぼやいていきます。