巻頭vol.20 2024年4月号
春がいきなりやって来ました。
長年のマレーシア暮らしの影響なのか、身体が冬になかなか適応してくれません。全身の筋肉が固まってしまい、両手の指先が神経痛で動きづらくなってしまいました。ほとんど冬眠中の蛙のような状態で冬を耐え忍んでいましたが、暖かくなって身体のこわばりが緩んできたような気がします。私にとっては、「雪解け」ならぬ「肉解け」の春の到来です。
家の庭にはヒイラギナンテンの可愛い黄色の花、たくさんの赤いチューリップ、濃い紫色のムスカリ、赤・白・青紫・薄紫色のヒヤシンス、薄青で星型のハナニラ、フキなどが咲き、白いチョウが舞い、小鳥たちが囀り、猫は窓際で日向ぼっこをしているという、なんとも賑やかで明るい季節になりました。
去年、庭の土を掘り起こし、木の根っこや石ころを取り出し、刈った雑草と土と米ぬかを混ぜて「土づくり」をしました。米ぬかは、近所のコイン精米所(こんなものがあることを初めて知りました)で、無料でもらえます。さて、これからここで何を育てようか。食べられるものにしようか。それとも、きれいな花がいいか。
去年は両方にチャレンジしました。食べられるものは、枝豆。まだ、土づくりができていない段階で植えたので、発芽する前に虫に食べられて全滅してしまいました。花はヒマワリ。小学生のときに夏休みの自由研究で育てたことがあったので、さすがに大丈夫だろうと思いましたが、秋になっても花が咲かず、どんどん大きくなっていきます。五本の茎は、茎というよりも木の幹のように太くて硬い。結局、花が咲いたのは11月中旬から12月にかけてでした。普通のヒマワリを植えたつもりが、実は「コング」という秋に咲く品種だったらしく、予想外の大きさと開花時期の遅さに驚きました。
超初心者の庭いじりですので、こうした失敗も楽しい経験になります。とはいいながら、実はすでに枝豆の種を購入してリベンジねらっていたりします。
所長 大谷雅憲
先月に引き続き、市民センターで携わっている日本語ボランティアでの話です。私が担当しているベトナム出身のお二人は23歳と33歳で、ACTで接している生徒よりは年齢が上ですが、私の知り合いの範囲ではかなり若い部類に入ります。二人とも本国でベーシックな日本語は勉強してきているので、家族の呼び名もひと通りは知っているのですが、兄を「あに」と読ませ、別名「おにいさん」と言わせるようなトリッキーな使い方になると、兄がオニになったり姉がオネになったりします。
そんな話題の延長で、平均寿命や家族の年齢について会話するうち、若い方のトランさんはおじいさんが戦争で48歳のときに亡くなったと教えてくれました。ベトナム戦争です。私が子供の頃、遠い国の出来事としてテレビニュースでぼんやり見ていたあの戦争で、目の前にいる二十歳そこそこの青年のおじいさんが戦死されたという事実に、ちょっとした衝撃を受けました。
このボランティアグループの日本語学習者の中には、廿日市に嫁いだ娘さんを頼ってウクライナから避難してきた方もいます(先ほどダンス講師の仕事を見つけて転出していかれましたが)。教科書やニュースの報道でしか接しないと思っていた歴史や地理のリアリティが妙に身近に感じられる毎日です。
代表 佐々木真美