KLスカラン 母のぼやき 第11回

複眼で見るマレーシアB面「29 Februari」
1つのトピックに母娘それぞれの感性で迫るコラボレーションコラム(今回はそれぞれのトピックに迫ってます)

今年は閏(うるう)年、2月29日までありましたね!2012年閏年公開の「29 Feburuari」というマレーシア映画をご存知の方はいらっしゃるでしょうか。

イギリス統治下の1896年2月29日に生まれた主人公のマレー系青年Budiは四年に一歳ずつしか歳を取りません。ツッコミどころは満載だけどそこはさておき、1957年の独立宣言の会場で見そめた中華系の女の子Lily(Lily=百合の花)とBudiは恋に落ちますが二人は引き裂かれます。英国統治から日本軍の侵攻、再びの英領、1948年共産ゲリラとの内戦による非常事態宣言、1957年の独立宣言、1963年東マレーシアがマラヤ連邦に加わりマレーシアが成立、1965年シンガポールが分離され1969年総選挙の後に起こる5月13日事件と呼ばれるマレーシア史上最大の民族衝突事件、この激動の時代を青年は駆け抜けます。

この5月13日事件でLilyは家出をして行方不明になってしまいますが、彼女の父親をBudiは偶然助け、Lilyがペナン島にいるという唯一の手掛かりを頼りにペナンへ向かいます。Budiはペナン島へフェリーで渡りLilyを探し続けますが見つけることはできません。1985年にはペナン島への橋が開通し陸路での移動が可能になり、テレビ画面の中で当時の首相マハティールがテープカットをするニュースをBudiはひとり眺めています。

あらすじだけ見ると陳腐な印象もありますが、いいんですよー、この映画。独立宣言の高揚感や、激動の時代が流れていたんだなーというなんとも言えない雰囲気がよく伝わってくるのです。日本人でもありますよね、明治や戦後の高度経済成長期など特別な感情が呼び起こされる時代のイメージ。おそらくその類の何かがマレーシアのこの100年にも詰まっているのではないでしょうか?

それと、何がいいって青年役の役者Remmy Ishak(レミー・イスハック)がカッコいいんですよ。ローカルテレビのドラマにもよく出ているし相当な大スターなんだろうと思っていました。先日、日本人より日本語の上手なマレー系男性に質問したら「あー、昔はね。もう消えかかってる」とのこと。えええ!ショックだわ。それにも増して日本語の表現が上手過ぎるわね、日本に行ったことないって嘘でしょ。

Lily役のJojo Gohも女優魂アリアリで、ネットのインタビュー記事によれば「マレー語での映画出演は初めてだったけれども、私たちの National Languageであるマレー語をチャイニーズアクセントなしで喋るためにかなりの努力をしたわ。」と。

さらにこの映画をYouTubeで検索していたら、いつもは迷惑な”あなたへのおすすめ”に貴重な情報が。Budiの友達役の役者が元男性アイドル四人組だったのだが脱退騒動で揉めて(マレー語なので想像)涙を流している動画、さらにその後和解した(これも想像)四人が泣き崩れている動画、が上がってきました。彼、今でもテレビによく出てるんだけど、そんな過去があったのねぇ。時代と時間の流れだけはみんなに平等だなぁ。