海外から日本の大学進学を考える、その傾向と対策
海外から日本の大学に進学する場合、どんなことに留意して準備を進めたらよいのか、全体像を解説します。
志望大学・学部について知ることは、受験生にとっての第一歩です。国内生の場合は、受験科目を決めて、過去問題を何年分か入手すれば、「傾向と対策」の基礎は出来上がります。しかし、インター校生の場合はそう簡単にはいきません。大学によって、あるいは学部によっても「求める学生像」が異なることがあります。受験生は小論文や面接、志望理由書などで「適性」をみられるため、大学・学部について、そして「自分はどういう人間なのか」についての自分との対話が必要になります。また、選考方法にしても、試験科目が変わるだけでなく、試験そのものがなくなる、あるいは全く別の選考方法に変わることもあります。
最近の傾向としては、英語で授業を受けることを前提とした、英語プログラム(グローバル入試)を採用する大学・学部が増え、受験生にも人気があります。これは、単に入試の選抜方法が変わったというものではなく、「帰国生に求めるもの」が、これまでの帰国生入試とは異なってきていることを意味しています。
従来の帰国生は、「異文化体験を通して得たものの見方や考え方を活かしてゼミなどに刺激を与えるような存在」が求められていました。日本の教育のゴールは、これまでの「正解(のある問題)に早く正確にたどり着く」教育から、「正解のない問題の解決に向けて協同する」教育へと移行しています。帰国生は後者を担う人材として期待されているわけです。しかし、グローバル入試で入学した生徒は、主に秋入学で留学生と英語で学ぶわけですから、「異文化体験」そのものを入試選考で問われることはありません。もちろん、そうした素養は前提として求められているのでしょうが、「帰国生と国内生(日本語ベース)」「〈帰国生+留学生〉と国内生(日本語ベース)」「帰国生と留学生(英語ベース)」という3つのカテゴリーに学生を振り分けようとしているように見えます。
こうした傾向をよく表している例を挙げましょう。
早稲田大学では2025年度入試から一部の学部・学科を除いて帰国生入試の募集が停止されます。これまで、早稲田大学の帰国生入試は、小論文・日本語・英語の共通試験(英語は途中からTOEFLのスコア提出)で複数学部を併願できました。帰国生の人気も高く、ACT教育ラボからの合格者数は延べ57名(前身のACT教育研究所を含む)で、2位の上智大学(31名)、3位の慶應義塾大学(30名)を引き離して断トツの1位です。この試験がなくなってしまうわけです。それでも早稲田大学を希望する生徒は、「グローバル入試」か「外国学生のための学部入学試験」を受験しなくてはなりません。
「グローバル入試」は英語をベースとした書類選考ですので、学校の成績・TOEFLのスコア・英文の志望理由書で合否が決まります。「外国学生のための学部入学試験」は、主に留学生を対象とした入試ですが、帰国生入試がなくなったため、日本語ベースの帰国生はここに含まれてしまうことになります。こちらも書類選考(学部によっては面接も)ですが、学校の成績の他にTOEFLと日本留学試験(科目は学部によって異なる)のスコア提出が求められます。このように、早稲田大学は、英語ベースにしても日本語ベースにしても帰国生は留学生と同じ扱いで入試の選考が行われることがわかります。
このように多様化が進み、毎年大きな変化がある帰国生入試に対応するためにはどうしたらいいでしょうか。私のアドバイスはただ一つだけ。「大学のホームページをしっかり読もう」です。帰国生や留学生を大切に扱っている大学は、ホームページも充実しています。入試の最新情報はここで入手できます。過去の入試問題をダウンロードできる大学もあります。また、大学の理念や学部紹介だけでなく、教員や学生、卒業生の声を動画などで見ることができたり、模擬講義を受講できたり、さまざまなサービスが提供されています。そして、わからないことがあったら、ためらわずにメールで問い合わせをしましょう。そもそも何を聞いたらいいのかがわからないといった場合は、私どもにご相談ください。