巻頭vol.19 2024年3月号
帰国生入試についての記事を書くために早稲田大学のホームページ内を散策していると、ACTの生徒だったKさんの活躍を紹介している記事に出会いました。KさんはISKLを卒業後、早稲田大学文学部に進学し、ビール会社に就職。27歳の時に1年半で5億本を売り上げるメガヒット商品を開発して世界で注目されました。「Forbes Japan Women Award2019」のルーキー賞を受賞しています。詳しい内容に興味のある方は、リンク先(下の早稲田ウィークリー)を参照して下さい。
Kさんは、マレーシアで、文化背景の異なる人に囲まれる〈ごちゃまぜ感〉に魅力を感じ、それが大学や学部を選ぶときの動機になったそうです。また、ISKLでのダンスチームやバンド活動は、大学のサークルや社会人になってもライブハウスでの活動につながります。そうした人々の情緒に寄り添うツールがビール。一見関係がなさそうに見えるものが見事につながっていることがわかります。
風の便りやふとした偶然から、元生徒たちの近況を知ることがあります。彼らに共通しているのは、異なるジャンルを横断したり、つなげたりしているところです。千葉大学の教育学部(生涯教育)に進学した生徒は、大学院は医学部(予防医学)で博士号を取得し、現在は東京大学の特任助教です。ICUから東大大学院→スタンフォード大学院(医学部)で博士号を取得した生徒は細胞の、トロント大学(建築)卒の生徒は建築技術のデジタルデータを共有・活用するビジネスをスタートしたようです。司法試験合格後、英国法資格を取得して渡英した者もいます。
ここまで書きながら、なんとも落ち着かない気分になっています。書いていることのイメージが鮮明な絵とし頭に浮かばないほど、時代から取り残されている自分を感じてしまったからです。新しい世代に幸あれ!
所長 大谷雅憲
地元の公民館で日本語を教えるボランティアに参加することになりました。今回初めて受け持つ生徒はベトナム人技能実習生の二人。牡蠣(カキ)の殻を剥く仕事をしているそうです。という話を聞けたのは、彼らが日本語を多少なりともしゃべれるからで、英語が使えないとなると、こちらは手も足も出ず、スマホの翻訳ソフトが欠かせない、なんともポンコツな先生です。
彼らの従事する技能実習制度は何かと評判が悪い(今年度以降、「育成就労制度」と名称を変えて、労働環境・条件の改善がされるそう)ですが、その実態を私が知ったのは十数年前、インター校の生徒たちの話からでした。彼らには代々先輩から受け継がれた長期アルバイトがあり、それが長野県でのレタス収穫で、夏休みになると現地で技能実習生と一緒に働いていたのです。新年度が始まって一時帰国時の話をする中で、バイト先に外国人労働者がいたと聞き、これがあの技能実習制度かと知った次第です。
当のインター校生諸君は長い夏休みの前半、農家に住み込みで夜明け前から働き、「きつかった〜!」と言いながらも、ほぼ全員が人生初めてのバイトで給料をもらい、それなりに充実した顔をしてマレーシアに戻ってきていました。長野のレタス畑で外国人技能実習生とインター校生がともに汗を流しながら、どんなコニュニケーションが生まれていたのでしょうね。
代表 佐々木真美