大学入試小論文クラスの授業テーマ
ACTの小論文クラスは日本語での教養を深める「準備クラス」(高校1〜2年生相当)と帰国生入試対策を行う「演習クラス」(受験生対象)の2部構成。演習クラスでこの半年間(2023年8月〜2024年1月)に行った授業のテーマについて解説します
開講日時:毎週金曜日 19:40~21:30(マレーシア)/ 20:40~22:30(日本)
【大学入試小論文】
「感情移入と他者理解:早稲田大学2005年」
「専門主義と教養:早稲田大学2012年」
「社会力:早稲田大学2011年」
「統合を求めない多文化主義:早稲田大学2021年」
小論文演習は早稲田大学の問題からスタートしました。理由は、課題文の文章量がA4で2ページと長すぎず、課題文の理解と生徒の海外体験を元にした表現力が求められるバランスのいい出題になっているからです。テーマも時代の動く方向を捉えた良問が揃っています。
「日本文明と近代西洋:静岡県立大学2000年」
「近代化」も日本を考えるときに避けては通れないテーマです。「なぜ、非西洋の国の中で日本だけがあれだけ急速な近代化を成し遂げることができたのか」という問いは、マレーシアで私自身さまざまな国の人間から質問されました。「現代日本の開花」(夏目漱石)を参考に説明することが多かったのですが、課題文はその後の日本の近代化の特徴と問題点にも触れています。インター生ならぜひ知っておいてほしい教養です。
「英語と日本語のあいだ:東京外語大2022」
「謝らないアメリカすぐに謝る日本人:東京外語大2023」
比較言語学や比較文化は、志望学部にかかわらず、外国で高校生活を送ったインター生には身につけておいてほしい視点です。生活に慣れてしまうと忘れてしまいがちな感覚なので、日頃からメモをしておく習慣をつけておきたいもの。
【マレーシアを知る】
「マレーシアから学んだこと」
「少数派の声、メディアが代弁〜筆者の意見に反論する」
「帰国生入試では、『滞在国について知る』ことの比重が高い」と、口酸っぱく言っていますが、なかなか浸透しません。小論文だけでなく、面接、志望理由書などで、滞在国での経験(通っていたインター校の特徴を含む)が繰り返し問われます。受験前の付け焼き刃の知識ではどうにもならないので、日頃から言語化しておく必要があります。
【一般的なテーマ】
「2023年、私の5大ニュース」
2023年に話題になったニュースや、流行したこと、キーワードを振り返った後、記憶に残った自分の経験を加味して、ランキングをしました。なぜ、それが自分にとって重要な出来事だったのかの説明つきです。
「日本にあるオンリーワンを世界に発信する方法」
「文化の受容と変容〜ジャポニズム」
入試問題で取り上げたテーマを応用した問題です。日本の近代化の特徴として、「近代化=西洋化」を全面的・積極的に取り入れたのも関わらず、西洋化できなかった残存部分が「和」として日本のオリジナリティを形成しているのではないかという筆者の問いを引き受けて考えたのが前者。逆に西洋が日本の文化からどのような影響を受けたのかを考えたのが後者になります。
「『聴く』ことの力:鷲田清一」
「聴く」という行為は受け身な印象を持たれがち。でも、実は相手の存在を丸ごと受け止めることで、不安定な精神状態に陥った人を癒やす効果がある、という臨床哲学者のエッセイを読んで、「聴く力」について考えました。
まず最初に私自身が二十代のときに「聴く」ことの力を経験したエッセイを読み、それから課題文に取り組みました。課題文は1995年の阪神・淡路大震災のボランティアの体験談を元に書かれています。能登半島地震が起こり、阪神・淡路大震災から29年後の時期に授業をしましたので、自分自身が経験したこと(私はすでにマレーシアにいましたが、一人暮らしをしていた母が被災した時のこと、東京で教えていたときの生徒が学校を休んでボランティアに参加したことなど)を話しました。また、このテーマは「社会力:早稲田大学」とも繋がっていることも話し合いました。