さくぶん道場 第182回 大谷雅憲
2023年10大ニュース
「さくぶん教室」をはじめ、大谷担当クラスの年末の最終授業は、毎年恒例の「私の10 大ニュース」。「2023年TVニュースランキング」「Z世代ヒットランキング」「流行語大賞」「2023年の有名人(Z世代)」「個人的に印象に残った経験」などを参考にしながら、自分にとって2023年はどのような年であったのかを振り返ってもらった。ちなみに、TV ニュースで取り上げられた総時間数のトップ5はこんな感じ。
1位 ロシア・ウクライナ情勢
2位 大谷翔平・異次元の活躍
3位 侍ジャパン・3大会ぶりにWBC制覇
4位 各地で記録的猛暑・大雨も
5位 物価高による値上げ止まらず
おそらくこの統計は11月末までのもの。12月を含めると、大谷選手のMVPやドジャーズとの10 年7億ドル(約 1015億円)というスポーツ史上最高の契約金のニュースが加わり、イスラエルのガザ攻撃もあったので、最終的な順位は違ったものになっているはず。そのほかにも、「新型コロナ5類引き下げ・3年ぶりの平時に」「原発の処理水、海への放出始まる」「ジャニーズ事務所、性加害問題認めて謝罪」「日本各地でクマ被害、死傷者過去最多」「阪神タイガース38 年ぶり日本一」「将棋、藤井聡太史上初の八冠」などのニュースが取り上げられていた。
タイガースファンの父は優勝の瞬間を見ることなく亡くなったのだけれど、あれから38年経ったのか。あのとき僕は大学の最終学年で、病院の集中治療室で1ヶ月寝泊まりしていたな。去年の秋に僕が住んでいるところから少し離れた山間の道をドライブしていたときにクマと出会ったのには驚いた。などと、自分の経験と重ねながら一年を振り返った。
中でも気になったのは、「国内の出生数、初めて80 万人下回る」というニュース。「日本の人口は、約1億2500 万人だ。そのうち「子ども」に当てはまる 0歳から14歳までの人口が約1435 万人。総人口に占める割合は11.5%。こうした数字だけではなかなかイメージを持ちにくい。
そんな場合、僕は他の数字と比べてみることにしている。日 本国内のペット数は犬が 705 万 3000 頭、猫が 883 万 7000 頭で、合計 1599 万頭。日本では子どもの数はペ ット(犬・猫)の数のよリも少なくなったのか。
もう一つ、今年の10 大ニュースを考える中で感じたことがある。それは、Z世代(物心ついた時からインターネットが利用可能であった世代)とそれ以外の世代の「世界の見え方」の違いだ。僕は1日の多くをパソコンの前で過ごしているし、10代の青少年と話をするのが仕事なので、年齢の割にはZ世代の人たちとコミュニケーションは取れているほうだと思う。ただ、そのためにはそれなりの努力はしている。たとえば、生徒は全員21世紀生まれだ。彼らとバブル時代の日本の話をするとしよう。たとえば17歳の生徒にとって1990年は、生まれる16年前も昔の話になる。1961年 生まれの僕に置き換えてみると、1945年(終戦のとき!)。だから、バブル時代の話をするときには、「共通理解がない」ことが前提になる。
なぜ、こんなことを書くかというと、僕とZ世代とでは情報源が明らかに違うからだ。レコード、カセットテープ、ビデオテープ、CD、DVDなどの物体は「デジタル・データ」に置き換わった。ニュースは新聞やテレビの危機どころではなく、ヤフーですらなく、LINEから入る。フェイスブックはすでに死語に近い。Z世代のヒットトレンド 20のうち聞いたことも想像することもできないものが、「ひき肉です」「#なぁぜなぁぜ」「スイ カゲーム」「ちょんまげ小僧」「ちいかわ」「蛇化現象」「10円パン」「Be Real」の8つもあった。知っていると自信を持って言えるのは「大谷翔平」「やす子」「ヌートバー」「あの」「VIVANT」の5つだけ。後の7つはかろうじて聞いたことがあるといった程度でしかない。トレンドといえば、浜辺美波 (「らんまん」NHK 朝ドラ、「シン・仮面ライダー」「ゴジラ-1.0」)、アイナ・ジエンド(「キリエのうた」)、藤井聡太 (将棋八冠)が 30 位にも入っていなかった。そういえば、 Adoも入ってない。こうした「世界の見え方の違い」がとても刺激的だったりする。