巻頭vol.16 2023年12月号

大学入試小論文の課題文を毎年読んでいると、大学の「いま」という時代との向き合いかたの変化が見えてきます。たとえば、グローバル化という言葉は、90年代には未来の「光」として扱われることが多かったのが、アメリカ同時多発テロ以降、気候変動・格差社会・移民問題・文明の衝突など、「闇」の部分に目を向けるものが主流になりました。そうした問題が山積するにつれて、根底的なパラダイム・シフトが起きているのではないかという問いかけが、ここ数年の問題意識の中心になっているように感じます。

パラダイム・シフトとは、「その時代に当然と考えられていたものの見方や考え方が劇的に変化すること」。激動のただ中にいる私たちは、これまでの見方や考え方が通用しなくなっていることを何となく感じていても、新たなパラダイムがどういったものになるかはわかりません。そうした「先の見えない不安」の中に包まれていたのが、少しずつ形を伴って目の前に現れてきたような気がします。かつてのパラダイムへの適応に成功した日本社会にとって、新パラダイムへの転換は大きなエネルギーを要することになりそうです。

「いつまで夏が続くんだ。あ、秋。え、もう冬なの?」というのが、日本で二度目の冬を迎える私の実感です。北海道でほっけや鮭などの漁獲量が減り、代わりに暖流に乗ってフグやブリなどが取れるようになったのも、目にみえる変化です。政治・経済の分野では、新自由主義に代わって、コモン(公共・自治)が立ち上がってきました。

ワクワクする変化もあります。野球の大谷選手だけでなく、ラグビー、サッカー、バスケットボール、バレーボールなど、20年前には想像もできなかった肉体が躍動しています。将棋の藤井八冠、音楽ではAdo、アイナ・ジ・エンド、ひまりなど、これまでの自分の経験など一気に吹き飛んでしまう驚きでした。

所長 大谷雅憲

九月に手首を骨折して以来、リハビリのために広島市内の整形外科に通っています。ひねると少しばかり違和感はあるものの、日常生活に支障はないので、どこまでの回復を目指しているのか自分自身よくわかっていないのですが、医師と理学療法士に「回復が早い!」とおだてられ、週に一回コツコツ通っています。この整形外科は予約制でないため、混んでいるかどうかは行ってみないとわかりません。マレーシアではクリニックに出向く際、急病以外は予約をしていたので、この先着順システムはなんだか不便な気もします。

そんな話を治療を受けながら担当理学療法士のU氏にしたところ、この病院でも予約制だった時期があるとのこと。しかし、予約にすると急なキャンセルがあった場合に空き時間が出来てしまうし、実際そのようなケースが少なくなかったため今の形に落ち着いたそう。アナログの方が効率がいい場合もあるということですね。

U氏はまた、冬場、つまりこれからの時期にリハビリ患者が増えると教えてくれました。寒くなって身体が冷えると古傷が痛みやすくなるようです。反対に夏には患者数がぐんと減るらしい。日本では整形外科さえも季節の影響を受けるというところに温帯らしさを感じます。

           代表 佐々木真美