巻頭vol.15  2023年11月号

2020年3月、マレーシアでコロナによる活動制限令(MCO)が発令されて日常の景色が一変したときに感じたのは、エッセンシャルワーカーのありがたさでした。エッセンシャルワーカーとは、最低限の社会インフラ維持に必要不可欠な労働者のこと。公衆衛生に関係する医療関係者やスーパーマーケットや小売店の店員さん、そこに物資を運ぶ運送業者、掃除やごみ処理にかかわる人たち……そうした社会インフラが止まってしまうと、私たちの生活は一気に崩れてしまいます。

 この時期以降、経済学者宇沢弘文の「社会共通資本」が再注目されるようになりました。「社会共通資本」とは、「水やエネルギーや食、教育や医療、あるいは科学など、あらゆる人々が生きていくのに必要とするものは、〈コモン〉として扱われ、共有財として多くの人が積極的に関与しながら管理されるべきものだ」という考えかたです。

 この考えかたを引き継いだ7人の気鋭の学者や政治家が書いた本が、今、ベストセラーになっています。先ほどの引用も、『コモンの「自治」論』(斎藤幸平+松本卓也編)からのものです。

 この本を読んで、「これは新たな共同体を作る試みだ」と私は解釈しました。20世紀以降、農村型共同体(おらが村)は解体して人々は「マス」のなかで孤独になりました。それでも、私の学生時代には、小さな喫茶店でマスターと年齢や職業の違うお客さんたちが語らう「居場所」がありました。いまの時代ならSNSを使った緩やかなネットワークでしょうか。そうした繋がりをベースにして「コモン」を再生する試み。私はそこに可能性を感じました。

所長 大谷雅憲

 

今年は暑さが長引いているとニュースで繰り返し報じていましたが、十月も後半となり、ようやく朝晩は家の中にいても冷気を感じるようになりました。

この一年で自分でも変わったなと思うのは、天気予報を毎日見るようになったことです。今日は気温が高くなりそうだから脱ぎ着のしやすい服にしておこうとか、明後日は雨が降るらしいので外出は明日に前倒ししようとか、天気を見ながら予定を立てる暮らしは、なかなか新鮮です。マレーシアでは天気予報を気にしたことなどありませんでした。最高気温は毎日32°Cぐらい、スコールが降れば動けないけど、そのうち上がるしと、のんきに過ごした日々もそれはそれで懐かしいです。

このACT通信を配信した直後の10月30日から11月3日まで、私、佐々木はクアラルンプールに参上します。この機会に、面談でも雑談でも歓談でも、ご希望をいただければ日時を設定しますので、メールアドレスにご連絡ください。お目にかかれるのを楽しみにしています。            

代表 佐々木真美