KLスカラン 母のぼやき 第6回
複眼で見るマレーシアB面 by KAYAの母
1つのトピックに母娘それぞれの視点で迫るコラボレーションコラム
*スカラン(sekarang) :マレー語で「今
娘がインターのGrade9(日本の中3相当の学年)の頃、韓国系英語塾の個人レッスンに通っていました。一年ほどは見た目も中身もアメリカ人の韓国人先生ジュリーに教わっていたのですが、その先生が帰国することになり、私は次の先生もできるだけおしゃべりで話題豊富な先生をつけていただくよう塾にお願いしました。そしてインド系シーク教徒マレーシア人青年のラジ先生が娘の担当になりました。ジュリーはとても熱心で美人の先生でしたが、対照的にラジはなんというか良い意味でイイ加減でバイトって感じのお兄さん先生でした。
ジュリーは真面目なプロテスタントだったのでキリスト教の考え方を教えてくれましたし、もちろん韓国のこともアメリカのことも、いい話も悪い話も支持する政党までもね。キリスト教的考え方は西欧を考える時に必須なものだと私は思うので、人生の半分以上をアメリカで暮らした韓国人プロテスタントから学問ではないキリスト教感覚を英語で、しかもムスリムの国マレーシアという土地で、それに触れさせてくれたジュリーには心から感謝しています。日本風に表すと昭和世代のジュリー、中学時代はトシちゃん(田原俊彦)のファンだったって。 そのような脱線した話にこそ語学レッスンの面白みが詰まっていると私は思っています。昔からポイントは教えてくれるけどやる気の薄い先生が大好きな娘、そういう意味でもラジも娘にとってとても良い先生だったと今でも感謝しています。
さて、その塾の事務長さんは綺麗な韓国人女性でとても優しい方でした。私は彼女と基本的にはSNSで連絡を取り合うのですが、レッスンの時間変更、授業内容の注文、TOEFL講習の内容や日程まで全てをアレンジしてもらって、日々の娘の遅刻のフォローまでしてもらい、私のド下手英語のたわいもない話にも返信してくれるほど優しい方なのに、ある時、彼女をラジと私の板挟みにして困らせることになってしまったのです。
その日の午後三時ごろ、私の主人がコロナにかかったことが判明し、娘は濃厚接触者(今となってはなんだか懐かしい響き)ですから急遽その日のレッスンをお休みする旨を彼女にメッセージしたところ、ラジが「理由はわかるがせめて1時間以上前に連絡をするべき、そうすれば俺は俺の時間をもっと有効に使えたんだ」と彼女に言ってきたらしいのです。何度かのやり取りの後、彼女は申し訳なさそうに「ラジの言い分も理解できるし、あなたの言い分も理解できます」とメッセージしてきました。こっちは筋金入りの日本のオバはんですから「わかりました。金は払うけど今日の授業は休む。ただしこういうことは今回限り」と彼女に往信。板挟みの彼女は「ラジの態度はよくないよね、ごめんなさい」と。しかもよくよく聞いたら彼女自身もお子さんの体調が悪くて自宅から全ての調整をしているとのことではありませんか。私が「あなたが謝る必要なんてない。母親って辛いよねー」と送信したら彼女も「そーだよねー」と。
月末請求のその月の授業料にその日の請求はありませんでした。彼女がなんとかしてくれたようなのです。ごめんね、こんなオバはんで。。。
でも、冷静になって考えてみると、これって日本人バイト講師だったら考えられない展開だと思います。一種のカルチャーギャップを感じました。オモシロイ!
別の日の午後三時ごろ、彼女から私の元にメッセージが来ました。「ラジは大雨のため来られないので今日の授業はキャンセルだそうです。」日々の程度の差こそあれ、季節によってはほとんど毎日クアラルンプールではスコールのような雨が降るよね。。。だけど、台風や地震などの自然災害の少ないマレーシアでは道路事情の悪さも相まって雨は大変な天災なのね。そしてそんな気候と風土がマレーシア人のあくせくしない民族性を育んだのかも、うんうん、おばさん理解しちゃうわよ。
そんなラジ先生、実はコロナの影響で採用待ちのエ◯アジアのパイロットの卵だったのです。数学も得意でGrade10の数学などお茶の子さいさいだったとか。心優しきシーク教徒ですが、屈強なガタイを生かして歴史的には傭兵でならした方達です。さぞかし制服姿もカッコいいことでしょう!キャプテン・ラジ、雨の日のフライトをキャンセルしないことを祈っております。