KLスカラン 母のぼやき 第5回
複眼で見るマレーシアB面 by KAYAの母
1つのトピックに母娘それぞれの感性で迫るコラボレーションコラム
セランゴール・オムニバス。ふざけていません、クアラルンプール(KL)とセランゴール州を走るバス会社の名前です。
KL市内のほとんどのバスはRapid KLという会社による運行なので、ほとんどのバスはプリペイドカードで乗ることができます。しかしこのセランゴール・オムニバスは何もかもが違うシステムだったのです。ぱぶりっくトランスポーテーション部の娘と私、どうせプリペイドカードで支払うんでしょと、ふたり合わせて所持金2リンギット(約60円)で乗ってしまったのです。
- 我々がバスに乗ってバスが動き出す→運転席横にあるはずのカード読み取り機がない→仕方がないので他の乗客と同じように着席→不安度60%
- ひとりのおじさんが乗客みんなに話しかけてるようだ→不安度70%
- おじさんAは車掌と判明、みんなお金を払うか回数券らしきものを渡している→不安度80%
- この時点で車内言語は全てマレー語→不安度85%
- 車掌さんに全所持金2リンギットを渡すと娘と私に1リンギット券を一枚ずつ渡される→不安度90%
- 途中のバス停でおじさんBが乗車してきて検札を始める→不安度100%
- 平静を装いおじさんBに1リンギット券を見せやり過ごす→不安度120%
- おじさんBは途中の駅で下車→システム理解不能? もしかしておじさんCも検札に来るの?→不安度150%
マレーシアのバスは車内アナウンスなどないため、自分がどこで降りるのか気を付けていないとなりません。今は便利なアプリがありますから自分が降りたいバス停の位置だけは分かるのです。でもこの時点で我々は追加料金を請求されたら現金がないので払えないという事態にパニックになっていました。
- 「後ろの人が何か私たちに話しかけてるよ」娘が言っている→不安度160%
- 後ろのお兄さんは我々の様子がおかしいことに気付いたらしい。意を決して振り向いて、降りたいバス停を携帯電話の画面を見せながら伝える→不安度170%
- マシンガントークのお兄さんは完全マレー語→不安度180%
- なんだかよくわからないけどまいっかー→落ち着きまくり車窓の風景を楽しむ
結局お兄さんが降りる場所を教えてくれて無事に目的地にたどり着くことができました。なぜでしょうか、”心頭を滅却すれば火もまた涼し”じゃないけど、あの時、娘も私もパニックを通り過ぎて清々しい境地に達したのです。めでたしめでたし、では終わりません。どんなにググっても答えが見つからないセランゴール・オムニバスの乗車システムを解明するために再び乗車するのです、最重要注意事項の小額紙幣を数枚持って。小額紙幣さえ持っていればもう怖くありません。
検証の結果、日本でもワンマンバスしか乗ったことのない我々は車掌さんの存在に慣れていなかっただけだったんです。しかも車掌さんは制服を着ているとか客席には座らないで立っているとかは日本人の勝手な常識で、車掌さんは制服も着てないし、おじさん車掌、おばさん車掌、お兄さん車掌もいるし、乗客とおしゃべりを楽しんでいるし。要は「行き先を告げて料金を支払う」だけのことなんですよね。もう一つ判明したことは、我々がドキドキしながら乗った区間の本当の料金は2.5リンギットだったのです。ありがとう、セランゴール・オムニバス。
ライター:KAYAの母 2020年より夫娘とともにマレーシア生活をスタート。ときに鋭く、ときにゆる〜く、話題に切り込みつつ、ぼやいていきます。