あじなんだより Ajinan Report vol.12
ACT教育ラボの所在地は広島県西部にある廿日市市阿品(「はつかいちし・あじな」と読みます)。「あじな」の住民になった自らを「あじなん」と名づけ、暮らしの中で気づいたこと・感じたことを報告していきます。第12回はここ最近の出会いについて。阿品からちょっと足を伸ばしてみました。
先月しょっぱなに出会ったのはツキノワグマです。山口と広島の県境の山中を車で走っているときに道路前方に黒いシルエットが見えました。
「え? 熊?」
車が近づく前にすばやく姿を消しましたが、たしかに小ぶりな熊でした。動物園以外で野生動物を見れたのがちょっと嬉しいお調子者の私でも、熊が日中道路上でウロウロしているのは問題だということはわかります。帰宅後に調べたところでは、このあたりの西中国山地には他の地域から孤立したツキノワグマの分布があり、国が狩猟を禁止しているとのこと。そのため一時は存続が危うかった彼らも現在は生息数と分布域が安定したのはよいのですが、一方で人間とのトラブルが増えてきているそうです。
人里近く降りてくるのは、やはり奥山の環境が変わってしまったからでしょうか。私たちの走っていた国道も元来の熊の生息域に食い込んでいたのかもしれません。本来接触のないはずの野生動物と人間の関係を考えると、出会いは必ずしも美しいばかりのものではないということに思い至ります。だからこそ動物と心を通わせられる“もののけ姫”が超絶かっこいいわけですね。
もう一つの出会いは瀬戸内海に浮かぶ大崎下島で。風待ちの港として江戸時代から栄えたという町屋通りを散策しているときに道端で猫をじゃらしている青年を見かけました。
「そこのギャラリーで写真展をやっているので、よかったら見ていってください」
そう声をかけてくれた彼が撮った船の写真がギャラリーいっぱいに飾られていました。聞けば、この島と隣の大崎上島を結ぶフェリーが廃止されると知り、この船「第五かんおん」を撮り始めたとのこと。しかし島民の強い要望でフェリーは継続されることになったのだとO君は嬉しそうに話してくれました。
(O君の写真集より)
「フェリーで通学している同級生も多いので、」
え? きみ学生なの?! なんと、彼は京都から大崎上島の学校にやってきたという、高校三年生なのでした。同じ島に全寮制のIB校があるのは知っていましたが、彼の通う公立高校も全国から生徒が集まっているそう。親元離れて島で仲間と過ごす高校時代、なんだかうらやましいぞ。