あじなんだよりAJINAN Report vol.1

ACT教育ラボの所在地は広島県西部にある廿日市市阿品(「はつかいちし・あじな」と読みます)。「あじな」の住民になった自らを「あじなん」と名づけ、暮らしの中で気づいたことをご報告していきます。初回のお題はユネスコ世界遺産にもなった宮島(厳島)の「鹿」(今回は一時帰国時に取材した記事です)。

海の回廊と大鳥居で有名な厳島神社のある宮島町は、二〇〇五年の合併で廿日市市に編入されました。ACT教育ラボのある阿品からは広島電鉄の路面電車で1駅、そこからフェリーで約10分、片道¥310の超小旅行です。宮島のフェリー乗り場を出ると、道端でのんきに寝そべる鹿がそこここに見られます。

鹿といえば、多くの和歌が鹿の声を詠み込んでいますよね。小倉百人一首でも猿丸太夫がこんな歌を詠んでいます。

奥山に 紅葉ふみわけ 鳴く鹿の 声聞く時ぞ 秋は悲しき

そこで気になったのが、鹿の声とはどんだけ切ないのか? さっそく宮島に向かい、鹿たちに近づいて耳をそば立ててみました。結果、わかったことは、

・普段はあんまり鳴かない。

・たまに鳴いたら、高音でピェーッ、ピェーッと叫ぶ感じ。

結論として、悲しみを誘う感じは私にはありませんでした。それよりも、名物あなごめし屋のショーウィンドウを恨めしそうに覗く子鹿の方がよっぽど悲哀を感じさせる。単なる好奇心で見入っているだけかもしれませんが…。

宮島では約十五年前まで観光目的で鹿せんべいを販売していましたが、頭数が増えすぎて、さまざまなトラブルが発生していました。私も昔々、小学校から行った宮島の遠足で、鹿に角でこずかれて弁当をまるまる奪われた覚えがあります。恐かった〜。当時、頭数が増えすぎて食糧が足りなくなっていたこと、ヒトの食べ物に味をしめてしまったことなど、さまざまな原因があったのでしょう。また、鹿が増えすぎたことで島全体の生態系、とくに植物に悪影響を及ぼし始めていることが平成に行われた広島県の調査でわかりました。現在は、どう適正な頭数を保つ管理をしていくかが課題となっていて、宮島町の観光協会は「エサやり禁止」「ゴミの持ち帰り」などの呼びかけをしています。かわいい鹿にモーレツにねだられるとつい食べ物をあげたくなりますが、そこはぐっとこらえるのがヒトとして最低限の責任かなと思う宮島の一日でした。(佐々木)