リベラルアーツ学部とは何ぞや

ここ数年、大学でリベラルアーツを看板に掲げる学部が目につくようになりました。特にグローバル系(入試から学位取得まで英語のみで可能な学部)で増えている印象があります。日本語にすると一般教養学部。ひとくちにリベラルアーツと言っても大学によって内容は異なります。

リベラルアーツ(一般教養)教育の概念は大まかに言って、専門分野以外にさまざまな分野の知識を横断的に学ぶことにより、多角的な視野と深い洞察力を持つ人間性を養うことをめざします。一般教養と聞くと、保護者の皆さんの世代は「あれ?自分の大学時代にもあったような…」と思われる方も多いのではないでしょうか。

日本の大学教育ではかつて、1、2年生を前期、3、4年生を後期と区切って、前期は主に一般教養科目を学び、後期は専門科目に集中するといったスタイルが一般的でした。この頃の一般教養は専門課程に入る前に学ぶ、あまり重要ではない科目という位置付けが学生の間では定着していたように思います。そのため、この“無駄な”二年間の教養課程を廃して、より高い専門性を持つ人材を育てようという気運が高まり、約二十年前まではスペシャリストをいかに早く育てるかが重視されてきました。しかし、それが行き過ぎると、自分の専門分野のこと以外には興味も関心もないという人材を大量に生み出してしまいます。医学しか学んでいない医者には患者の気持ちは測れませんし、対コロナのような急を要する防疫対策にも知識が追いつきません。これではせっかく身に着けた専門性が十分に機能しないことは明らかです。

その反省に立ち、現代社会で起こる複雑な問題に多角的にアプローチできる人材を育てることを目指して、各大学が従来の一般教養とは区別する意味で「リベラルアーツ」または「国際教養」と名付けた学部を誕生させました。2004年に早稲田大学の国際教養学部が創設されてから、その流れが一気に加速した感があります。これらのリベラルアーツもしくは国際教養系の多くの学部は英語での学位取得が可能なコース設定になっています。英語による発信力もまた現代のリベラルアーツには欠かせないものとみなされているのでしょう。以下にリベラルアーツのコースをいくつかご参考までに紹介します。

  • 早稲田大学国際教養学部SILS(School of International Liberal Studies) 初年度に7つの科目群「生命・環境・物質・情報工学」「哲学・思想・歴史」「経済・ビジネス」「政治・平和・人権・国際関係」「コミュニケーション」「表現」「文化・心身」「コミュニティ」から最低3つを選んで一年半学びます。1年間の留学を必須とし、2年生後期から研究テーマを定めていきます。https://www.waseda.jp/fire/sils/en/
  • 上智大学国際教養学部FLA(Faculty of Liberal Arts) 1949年に創設された「国際部」をルーツとするインターナショナルな環境で基礎科目(英作文・クリティカルシンキングほか)に専念した後、2年次後期より「比較文化」「国際ビジネス・経営」「社会科学」へと専攻が分かれます。https://www.sophia.ac.jp/eng/academics/ug/ug_la/ug_la_liberalarts/
  • 国際基督教大学(ICU) 1953年の建学時から一貫してリベラルアーツ教育を行なう独自の路線をとっています。31の専修科目から専門を決めるのは2年次終了後。入学時に志した分野とは全く異なる分野に進む学生も少なくないとのことです。 https://www.icu.ac.jp/en/