あじなんだより Ajinan Report vol.6

去年の暮れに用事があって東京に行きました。広島発の新幹線のぞみに乗車し、「しめしめ始発だから自由席でも余裕で座れたわい」とほくそ笑みつつ駅弁を広げ、お腹がいっぱいになったら眠りこけ、目が覚めたら「名古屋の次はもう東京だなあ」とぼんやり車窓から冬枯れの風景を眺める、のんきな4時間になるはずでした。

ところが。満腹で眠りこけたところまでは順調だったのですが、目を覚ました午後1時あたりから、なにやら怪しい気配が漂いはじめました。駅でもないところで新幹線が停車したまま動かない。当初は何かの点検をしているとの放送があり、「ま、言うても三十分はかかるまい」と楽観していたものの、その三十分が過ぎる頃、「名古屋駅付近で停電があり、復旧作業には相当の時間がかかると思われます」との放送&電光掲示が。

すぐそこに名古屋駅が見えているのに…。以前、タイで列車に乗ったとき、バンコク中央駅が見えているのに四時間立ち往生をした思い出が蘇りました。まさか日本で同じ状況に遭遇するとは!しかも日本が世界に誇るbullet train新幹線で!しっかりしてくれ JR! 大丈夫か日本!

JRと日本の行く末を激しく案じる私におかまいなく、車両は約二時間の足止めの後、名古屋駅止まりとなり、乗り換えた新幹線で発車を待つことさらに二時間。東京へは予定の倍となる八時間かかってたどりついたのでした。東京がこんなに遠いと感じたのはいつ以来だろう。

その上京を終えて阿品に戻った翌々日、広島に雪が降りました。大雪警報が出たとはいえ、これまた「言うてもお昼には溶ける程度でしょ」とタカをくくった私をあざ笑うがごとく、雪はこんこんこんこんこんこんこんこんこんこんと一昼夜降り続き、広島は三十数年ぶりの大雪に。いやその寒さたるや。南国から戻って一年目の冬初心者に厳しすぎやしませんかね。雪景色の町並みは普段とちがう趣きがありましたけれども。

その大雪の翌日は一転して晴天。宮島町観光協会が主催する観光ガイドの試験日です。帰国後、地元で何か私にできそうなボランティアないかと模索しているときに、この宮島町公認のボランティアガイドの募集を見つけ、早速応募したのでした。が、公認されるには受験をしなければならない。しかも内容は年号や固有名詞、数字を頭に叩き込む、昔懐かしい丸暗記式の試験です。

・593年 厳島神社創建 

・806年 弘法大師来島 

・1168年 平清盛による厳島神社改修

・海上大鳥居 高さ17m、棟の長さ24m

・島内に生息する鹿500頭、うち市街地に出てくるもの200頭etc.etc..

やっているうちに「こんな暗記に意味があるのか!」と思い始め(追い詰められた受験生によくある逆上パターンですね)、江戸期以降の歴史はうろ覚えとなる典型的なダメ受験生。本番は開き直って緊張もしなかったのですが、テスト終了後、前の席の受験者の回答用紙がびっちり文字で埋まっているのを目にして、すっかり諦めモードです。受験生の皆さん、どうぞ他山の石としてください。