あじなんだより Ajinan Report vol.42
ACT教育ラボの所在地は広島県西部にある廿日市市阿品(「はつかいちし・あじな」と読みます)。「あじな」の住民になった自らを「あじなん」と名づけ、暮らしの中で気づいたこと・感じたことを報告していきます。今回は「やさしい日本語」講座に参加してのお話。プラッシーって飲料をご存知の方、どれぐらいいるのかな。
先日、隣町の地御前(じごぜん)市民センターで開催された「やさしい日本語講座」に参加してきました。外国人に「早く」「正しく」「シンプルに」情報を伝えるための「やさしい日本語」は、1995年の阪神淡路大震災がきっかけとなって生まれたのだそう。震災時、外国人の死者数は日本人の約2倍もあったと聞き、胸が痛みました。講座の参加者は私と同年輩か少し年上と思われる20人ほど。排外主義の言説が恥ずかしげもなく叫ばれる昨今、地域で外国人と仲良く暮らしていこうと考える人がにこれだけいると知り、心強く感じました。

講座のオープニングでは前方スクリーンに2つのドアが映し出され、「どちらかが非常口です。さてどちらを選びますか」との問いかけがなされます。「日本語が読めない方にとっては、こんな感じなんです」と。ドアには外国語で何やら書かれています。…と言いたいところ、見覚えのある単語が並んでおり、つい、うれしくなってしまいました。
Pintu Darurat / Dilarang Masuk

(以下、心の声)「うむ、左のDaruratはなじみがないが、右のDilarang Masukはマレー語で立ち入り禁止だから、おそらく左が非常口であろう、あ、インドネシア語やマレー語の勉強に来たわけじゃなかったわ(~_~;)」
外国に行ったら、まず非常口を現地のことばで覚えねば、といった本筋を外れた教訓を勝手に一人で得て(ピクトグラムがあれば一目瞭然ですがね)、その後はグループワークで公的なお知らせを「やさしい日本語」にしていく作業にとりくみました。なかでもゴミの出し方の指示文では、ケンケンガクガク、メンバー全員で頭をひねりました。
課題文:リユースを推進するため、一升ビン、ビールびん、ジュースびんは、できるだけ販売店などに引き取ってもらってください
…そもそもリユースって何ですかね? リサイクルとは違うんだっけ? 一升ビンって、うちの孫だってわからないと思うなあ。ジュースびんって、昔お米屋さんが持って来てくれたプラッシーとかのビンのこと? わはは懐かし〜。しかし、その情報は要らないですねえ、と皆であーだこーだ言いながら、やさしい日本語に翻訳していきました。
今回私が学んだのは「公的な指示文は相当あいまいな表現である」ということと「難しくても必要な表現はそのまま使うべき」ということ。

特に後者に関して、じつは先日やっちまった一件がありました。何度かこのコラムに登場しているベトナム人のAさんが病院である手続きをするのに同行したのですが、事務の方が説明の際に「この申請が認められるまでに四ヶ月ぐらいかかることがあります」と言いました。この場合の返しとしては、「けっこうかかりますね」あたりが無難だと思いますが、とっさにAさんが口にしたのは「遅いですね」。それを聞いた相手は「遅いわけじゃありません!」と怒ってしまいました。Aさんに悪気はなく、これは時間がかかることを「遅い」と表現しても大体の意味は伝わるからと訂正してこなかった日本語教師(=私)の落ち度なのです。単純化するかしないかのあんばいはケースバイケースでむずかしい。でもさー、日本語内でもちょっとした幅はあると思うんですよねえ。「えらいわぁ」は全国的には立派だったり賢かったりするわけだけど、広島弁話者としてはキツい、疲れると訴えてるわけで。そこらへんはどうなんかいのう…。
