巻頭vol.36 2025年8月号

ACT教育ラボは8月に新年度が始まります。アメリカ系やイギリス系のインターナショナルスクールとは年度の始まりがほぼ一致します。ただ、1月始まりのオーストラリア系・カナダ系の生徒や、4月始まりの国内生が増えてきているのでやや混乱しますが、日本の大学や高校への進学を考えると、この時期のスタートが最適でしょう。

2025年の秋入学が終わり、2026年の春入学に向けての個別直前講習会のピークに差し掛かっています。出願書類を揃え、志望理由書を作成し、面接の練習をし、大学によっては提出小論文の作成があります。小論文についても、本番を見据えた最終調整の時期になります。志望理由書を何度も書き直し、面接で自分がどういう人間で何に興味を持ち、大学で何を実現し、社会とどう関わっていきたいのか。受験生は自分自身と真正面から向き合う、人生の中で最も濃厚な時間の中にいます。

私は伴走者というか、当事者ではなく横から応援する立場です。それでもこの時期は心身ともにくたくたになります。私が感じてきた受験生の魅力が十分に表現されているだろうか、もっと相応しい例はなかったか、相手に合わせようとしすぎていないか……。そんなことを考えながら、送られてきた志望理由書の未定稿をなん度も読み返していると、おそらく、受験生本人よりも志望理由の内容に詳しくなっていたりします。

パソコンから目を離してベランダを見ると、種から育てたメロンに小さな実がついていました。

 今、こうやって自分自身と向き合う濃厚な時間が、いつか懐かしく思い出せるものになりますように。 所長 大谷雅憲

先月、広島市内のお寺に父母の墓参りに行ってきました。お盆のずっと前だったためか、写真にあるような飾りはなく、普段通り見た目も穏やかな墓地でした。このカラフルな飾りは広島独自の盆灯篭(ぼん・とうろう)で、紙と竹で出来ており、お盆が過ぎたら焼却処分となります。高校時代、夏休みの短期バイトとしてこの灯籠を作りに行ったのも懐かしい思い出です。

今回お寺の奥さん(坊守さんと言うそうな)から伺った話によると、最近はお盆に法事をしたり墓参りに来る家庭はめっきり減ったのだそう。そこで彼女なりの結論が、「これまでずっと戦後だったと言うことに気がついたの」と。広島は80年前の原爆投下のため、8月6日命日の死没者が多く、15日前後のお盆は湧き立つような活気で各家庭が競って法事だ墓参りだとお寺にきていた、その時代が終わったことを実感するとのこと。「…そして新しい戦前が始まる、ふふふ」と不吉な冗談を口にする彼女、坊守さんらしからぬブラックなユーモアでこちらの気持ちを引き締めてくれます。歴史を振り返ったとき、「戦後が終わった今は戦前」とならないように心に誓う八月です。 代表 佐々木真美