KLクナンガン 母のぼやき 第9回

オランダスケッチ1&2

その1 それぞれのそれ相応の理由

オランダ人は飛行機のシートを倒さない。3時間程度のヨーロッパ間ならまだしも、日本からアムステルダムまで直行便13時間でも、大きな人もふくよかな人もシートをほとんど倒さないんですよ。このことを夫に話したら「そういえば、どこかの博物館で昔のオランダ人は床と水平の体勢で眠ることは体に良くないと考えていたため、半分壁に持たれるようにして寝ていたという記述を読んだことがあるから、その名残があるのかも」とのこと。まさか、そんな話って信じられます?大の字になって寝た方が体に良いんじゃないの? でも、博物館などで見る昔のベッドがやっぱり小さめなんだよなぁ。

先日訪れたチーズで有名な「エダム」という小さな街の小さな歴史博物館でもやはりベッドは小さかった。でも、その時私は聞いたのです! 音声ガイドが半分の姿勢でとかなんとかって言っているアナウンスを! どんな英語表現だったか覚えてないけど、というか聞き取れてたのか怪しいけど、夫に確認したらそう言っていたと!

やっぱりそうだったのか。その名残でオランダ人は座席のシートも倒さないんだ、これでモヤモヤ解決だ!と日本にいる娘に興奮気味にメッセージを送ったところ次の返信が来ました。「“リラックスし過ぎない文化”がオランダにはあるんじゃないのぉ〜」と。我が子ながら、この指摘には脱帽だ。

気候風土が民族性を育てるのか、その民族の特性ゆえにその気候風土の土地で暮らしていけるのか、これは鶏と卵の関係だ。

常夏のマレーシアに行って哲学しようと思う人は少ない、だって人はみんなバカンスに南国に行きたがるし、それはストレスから解放されて心からリラックスしたいからではありませんか? マンゴーもバナナも勝手に実っちゃうくらい食糧不足の心配もない、凍死の恐怖もない、地震も台風も来ない、そんな環境で肩の力が抜けてリラックスしちゃうマレーシアの心地よさ。

対してオランダの気候は厳しい。風車が止まれば水に沈んでしまう村や街、夏はあっという間に終わり冬の日照時間は短く毎日毎日曇天や雨ばかり、温暖化の影響を受けてもなお運河の表面が凍る冬の朝、しかも寒いだけで雪は降らない。リラックスし過ぎる人たちがここで暮らすと命の危険があるかもしれません! それに曇天の空のもと、山も丘も坂もない平坦な運河沿いの冬枯れの風景しか見えなかったら、やっぱり物思いにふけり哲学的になってしまう。

そんなことを考えているうちに長年の私の中の疑問が再び頭を持ち上げてきました。イタリア人は飛行機の着陸時に拍手をする(10年ほど前にイタリア発着便で私は本当にこの現象に遭遇した)、これにもそれ相応の理由があるのか? 検索するとコレはパイロットへの喝采だとか他の欧州人もやっているとか。

でも個人的納得には至らず、最近ではこの行動は廃れているらしいとの情報もあり今後も解決しそうもありません。私が見たあの光景は、一部の元気のいい人達がノリで拍手したというものではなく、そうするのが当たり前だという雰囲気でイタリア人が粛々と拍手していたのです。あれはまぼろしだったのでしょうか。

その2 スーパーマーケットにあふれるインドネシア語

歴史的背景からオランダの食品名称にはインドネシア語があふれています。マレー語とインドネシア語は同じ単語や似ている言葉がとても多いので、私にとっては「えっ!」とびっくりすることが多くあります。

Nasi = 米 / Tauge = もやし

マレーシアの国民的食堂ママックでは「白Nasiにカレー、魚の揚げ物とTaugeとキャベツ」を注文するのが私の定番だった!

 Nanas = パイナップル / Babi = 豚肉 こんな単語も(私にとってはマレー語)もオランダの食品店でよく見る単語です。

インドネシア料理店や屋台に行けば色々な味も食べられます。料理名は馴染みのあるマレー語と同じで、Rendang ルンダン(香辛料とココナッツミルクで煮込んだ肉料理)、Sambal サンバルの瓶詰め(辛いペースト)、Cendol チェンドル(緑色の不思議な食べ物とココナッツミルクの甘い飲み物)やPisang Goreng ピサンゴレン(揚げバナナ)、Kue Lapisクエラピス(バームクーヘンみたいな層になってるお菓子)。どれもこれも私がマレーシアで本当によく食べていたものです。

ああ懐かしいと思っていた矢先、マレーシアのインスタグラムなどを見ていると割とよくインドネシア人がどうしたこうしたという投稿を見かけるのですが、その中でもこの画像にびっくりしたのです。

えええ、Gratisってインドネシア語なの? オランダ語なの? オランダでGratisって単語を見ないで買い物することはほとんど不可能です! 1+1 gratisは1個買うと一個無料、2+1 gratisは2個買うと一個無料という意味。「メガセール」を超えて「ギガgratis週間」もあってgratis祭りです。もう私の頭の中では北島三郎先生が「まつり」を歌っています。

編集部註(佐々木)

1つのテーマに母娘それぞれの感性で迫る連載コラボレーションコラム。ともに暮らしたクアラルンプールを追想しつつ、日々の気づきを発信していきます。今月、A面は休載。来月には戻ってきてくれるかな?

筆者紹介

A面担当・KAYA(マレーシア名物ココナツミルクのジャムと同名):2005年12月生まれ。KLのインターナショナルスクールを卒業し、昨秋から日本での大学生活がスタートし、そろそろ一年になるところ。東京都内をはじめ、国内外のいろんな街をぶらついては立ち止まり、あれこれ呟きます。

B面担当・KAYAの母:2020年より5年間暮らしたマレーシアを離れて現在オランダ・アムステルダムに滞在。ヨーロッパの片隅から、ときに鋭く、ときにゆる〜く話題に切り込みつつ、相変わらず、ぼやいていきます。