あじなんだより Ajinan Report Vol.29
ACT教育ラボの所在地は広島県西部にある廿日市市阿品(「はつかいちし・あじな」と読みます)。「あじな」の住民になった自らを「あじなん」と名づけ、暮らしの中で気づいたこと・感じたことを報告していきます。今回はわがバイアスに気づかされた件。この単語を初めて知ったのは中学校の家庭科で使った「バイアステープ」でしたなあ。
縫製に使うバイアステープの”バイアス”は「斜め」から来ているそう(縦と横の糸で出来ている布地を45°の角度で切り取るため)ですが、日本語でも「斜にかまえる」というと、正面から向き合わない、ちょっとイカン感じがありますね。で、バイアス。「先入観」の意味で最近では日本語ネイティブ同士の会話でも使われます。普段の生活で自分がバイアスかかっているとは感じないものですが(それが本質的に問題なんだけど)、去年のマレーシア行きでつくづく感じた出来事がありました。
その1)日本から同行した旅友Tさんが私と別行動で現地の友人と出かけた話を聞かせてもらったとき。「彼女がいつも頼んでいるドライバーさんと連絡がついたので、一日車でまわった」という話を聞きながら見せてもらった写真には、Tさんとマレー人のご友人に加えて、もうひとり、恰幅のいいインド人女性が写っていました。一瞬、「あれ?」と思い、そう思った自分に対しても「あれ?」と思いました。ドライバーと聞いて、てっきり男性だと思い込んでいたのです。
その2)チャイニーズ系マレーシアン(これも微妙な表現。英語だとChinese Malaysianが適切だと思うのだが、彼らはMalaysian Chineseと自称する)の友人が最近転職した新しい職場であるホテルの上司について語っていたとき。「私以外の従業員は外国人。安く雇えればいいと思っていて、きちんと教育をしようとしない」。 友人の発音はHeとSheがかなり似ているものの、「職場のボスね」という理解でそのまま話を聞いていたのですが、ある局面で、Herという単語がはさまれました。「え? ボスは女性なの?」「そうよ、チャイニーズの女性。私より2歳若い」
ここでも「あれ?」と思ったのです。でもって、「あ、まただ」と思いました。私が話を聞きながら、どんなボスを思い描いていたかといえば男性だったのでした。
なんだかACジャパン(旧・公共広告機構)の「聞こえてきた声」というテレビ広告をそのまま地で行くような感じです。
同広告では「(赤ちゃんの泣き声)…はいは〜い、今行くね〜」「我が社の経営方針を発表します」「ご飯だよ〜」「将来の夢はパイロットです」など、文字だけのセリフが映し出され、最後に「聞こえてきたのは男性の声ですか? 女性の声ですか?」と視聴者のジェンダー意識を問うています。
これ言われてるの、私だわ〜、と改めて思いました。と同時に、マレーシアでそんなことに気づいたのは日本の状況がよっぽどひどいのではと考えて、ジェンダーギャップ指数を見たところ、意外なことにマレーシアは世界146カ国中114 位、日本118位で双方、大差なくひどい。でも実際、数字以上のギャップを感じるんだよなあ。