さくぶん道場 番外編
「ちゃあちゃんのビーフシチュー」
ACT通信のパイロット版ということで、2012年のさくぶん教室の雰囲気を再現してみました。
冬期講習の作文教室に参加してくれた4人の女の子との会話。日本の学年でいうと小2~小5のインター校生だ。
「大人になったら何になりたい?」という質問に、「象使い!」と即座に答える子。
「象使いになりたいってお父さんに言っても、わかってもらえないと思ったので、獣医になりたいっていったの。そしたら、獣医になると牛のお尻の穴に腕をつっこまなくっちゃいけないってお父さん。それはちょっと困る。」
しょっぱなから絶好調の会話で、僕はこのノリをキープするだけでいい。
「私のお父さんは、日本に帰ると卵をいっぱい買ってくる」
──卵を? マレーシアにいくらでもあるじゃない。
「それじゃだめなの。お腹がおかしくなるから」
──あっ、もしかして卵かけごはんにするの?
「そうそう。日本の卵なら卵かけごはんにしても大丈夫だし、割ったときも卵がしっかりしてるでしょ」
──でも、そのために卵をわざわざ日本から持ってくるの?
「けっこう割れちゃうけどね」
──冬に日本に帰れたらやりたいことってある?
「お餅つき!」
──日本人会でやってない?
「あれはダメ。三回しか撞かせて貰えないもん。私はお餅ができるまで撞きたいの」
──一番に食べてみたいものは。
「ちゃあちゃんのビーフシチュー」
──チャーハンのビーフシチュー??
「違う」
──ちゃあちゃんってお店の名前?
「そうじゃなくって、ばぁばのこと!」
いつまで聞いていても飽きない。作文を書き始めると、アイデアが尽きないようで、時間が足りずに家で続きを書いて2000字ぐらいの作品に仕上げてくる子もいる。
授業の二日目、送迎にいらしていたお母さんから次のような言葉をいただいた。「作文教室はどうだったと聞いたら、『あんな面白い大人はめったにいないよ』って言ってました」
「役に立った」「勉強になった」という評価は塾の教師として当然の務め。でも、「めったにいない」と言われたことはめったにないので、意外なご褒美をいただいた気持ちになったのであった。