巻頭vol.11 2023年7月号

瀬戸内海は島だらけ。世界有数の多島海であることは知識としては知っていましたが、約700の島(有人島は約150)が密集して絡み合う姿は圧巻です。山口県の東端の防予諸島から広島県の芸予諸島までが日帰りでドライブできる範囲です。

なんの計画もなく車を運転して、呉から下蒲刈島・上蒲刈島・豊島・大崎下島と、島と島を繋ぐ橋を渡りそれがとびしま海道だということを後で知りました。行き着いた先の御手洗港は江戸時代の街並みが保存されている素敵な場所で、「潮待ち・風待ち」の港として栄えたそうです。「ももへの手紙」「モヒカン故郷に帰る」「ドライブマイカー」など、かつて観た映画のロケ地だったことがわかり、それらの作品を見直す楽しみも増えました。ここからは、尾道と今治を繋ぐ「しまなみ海道」が見えます。

帰りは、呉から倉橋島、能美島を通って、能美島の先端から広島市の宇品までフェリーに乗って帰りました。

自宅から日帰りドライブできる多島海の西端と東端に、僕が敬愛する民俗学者の出身地があることを知って驚きました。防予諸島の周防大島は『忘れられた日本人』の宮本常一、福山市鞆の浦は芸能史や山の民・海の民についての著作が多い沖浦和光の出身地です。この範囲はちょうど村上水軍の活動領域と重なります。

彼らの著作を集中的に読み直しながら、いつか「パイレーツ・オブ・セトウチ」になることを夢見る今日このごろでした。

所長 大谷雅憲

去年の7月にACT通信パイロット版(vol.0)として7-8月合併号の送付を開始して今号でちょうど一年がめぐったことになります。ACT教育ラボ(ACT Japan)設立から一年が経とうとしているわけですが、この間マレーシアでの生活との違いを感じたのはやはり四季の移り変わりです。温暖な瀬戸内海地方とはいえ冬には雪に見舞われ、寒さがゆるむと庭木(よそのお宅の)や雑草(わが家の)が芽吹きだし、梅雨の今時期は町のあちこちでアジサイが咲き誇っています。冬場に近所の海でたゆたっていたカモたちはいつの間にか姿を消し、春先からは町中でツバメの低空飛行を見かけるようになりました。さまざまな動植物が身近かに感じられるのは、KLでは日中暑くて外を歩く気にならなかったのが、広島に戻ってからは時間があれば近所を散歩しているからかもしれません。

スマホを置いて歩き出すと気分が変わります。ずっと引っかかっていたことを読み解くヒントが閃いたり、本の中のよくわからなかったところが腑に落ちたり、新しい授業案が湧いたり、晩の献立のアイデアが浮かんだり。海辺の穏やかな日々が過ぎていきます。

この一年間、ACT通信を出し続けられたこと、ひいてはACT教育ラボの授業が継続できたのは関わってくださる皆様のご理解・ご協力があってこそ。心よりお礼を申し上げます。何ごとも一年めは勢いで乗り切ることができますが、二年めからこそが本番と心して、次なる一年を大切に作っていきたいと思います。

代表 佐々木真美